川﨑教授が2025年度日本分析化学会 学会賞を受賞しました。受賞タイトルは「金属ナノ粒子を用いた質量分析法および金属ナノクラスターを用いた蛍光分析法の開発」
【公益社団法人日本分析化学会 学会賞について】
公益社団法人日本分析化学会は、1952年に設立された分析化学分野を代表する学術団体であり、学術文化や社会の発展に寄与することを目的としています。2025年現在、会員数は約6,000名にのぼり、年会や春季討論会などの大規模な学術集会や研究懇談会を通じて、基礎から応用まで幅広い領域の研究交流を推進しています。学会賞は、分析化学における独創的かつ優れた研究業績を挙げ、その発展に顕著な貢献を果たした研究者に授与されます。
【受賞内容】
川﨑英也教授は、金属ナノ材料(ナノメートルサイズの極めて小さな金属の粒やクラスター)を利用して、新しい分析手法を開発し、大きな成果を挙げてきました。
1.質量分析の高感度化
従来のMALDI-TOFMS法では難しかった低分子の検出を、金属ナノ粒子を使うことで飛躍的に向上させました。特に、粒子の表面機能化、多層薄膜化、および磁石ナノ粒子を組み合わせることで、有害物質や薬とたんぱく質の相互作用を選択的に分析できるようにしました。
2.分子分布の「見える化」
物質を構成する分子の分布を調べる「イメージング質量分析」において、金属薄膜を使う新しい方法を開発。これにより、生体組織や高分子材料などの中で分子がどのように存在しているかを、より正確に可視化できるようになりました。
3.ナノクラスターによる新しい蛍光分析
数十個程度の原子からなる超微小な金のクラスターを精密に合成し、世界で初めて「三原色の発光」を実現しました。これを利用して、重金属イオンや病気の兆候となる分子を高感度に検出できるだけでなく、光を使ったがん治療(光線力学療法)への応用も切り開きました。
これらの研究は、分析の感度や精度を大きく高め、環境科学・医療・材料科学など幅広い分野に新しい可能性をもたらすものです。独創的かつ実用性の高い成果として国内外で高く評価され、日本分析化学会学会賞の授与につながりました。
