令和6年能登半島地震

災害関連死を防ぐために 

2024年3月 奥村執筆

研究情報誌「21世紀ひょうご」に投稿した論文「南海トラフ巨大地震に伴う災害関連死」の第4章で「令和6年能登半島地震の災害関連死」に関する分析結果(速報)をまとめました.学術誌「21世紀ひょうご」は有償冊子ですが,発行元と相談し,速報性の観点からその内容を本HPで公開することにしました.こちらからご覧ください.原稿「南海トラフ巨大地震に伴う災害関連死」

また,本稿の表4にある「関連死の疑いのある死亡事例」は,随時更新します.(2024年3月27日更新)


2024年1月18日(木)奥村執筆

電気が復旧しつつあります.自宅が全壊していなければ,避難所から自宅に戻るという方も多いと思います.しかし,過去の災害では,自宅に戻って安堵した時に,緊張の糸が切れるように体調を崩されるケースもありました.体調の変化にご注意ください.また,自宅に戻ると,壊れた家具などを一日も早く片付けたいと思われるかもしれませんが,決して無理をしないでください.特に,70歳以上の高齢者の方は,ボランティアの助けが得られるようになるまで,あまり慌てずに少しずつ作業を進めてください.

避難所から自宅に戻ると,住民同士で顔を合わせる時間が減ります.住民同士で体調の変化に気づき,声を掛け合えなくなることが問題です.過去の災害では,避難所よりも自宅の方が関連死で亡くなられています.自宅に戻られても,誰かとコミュニケーションを取る時間を大切にしてください.

一方で,自宅が全壊していると,仮設住宅などの住まいの目処が立つまでは,電気が復旧しても避難所生活が続きます.炊き出しによって温かい食事が提供され,自衛隊の風呂が用意されるなど,災害発生初期と比べれば,避難所の生活環境も大きく改善されていますが,生活が不活発になっている日々が続くと,体調悪化につながる恐れがあります.インフルエンザなどの感染症対策にも警戒が必要です.2週間以上に及ぶ厳しい生活の疲れを回復させるために,動ける方は旅館やホテルへの短期の避難を利用することも有効かもしれません.

また,被災地外への退避が必要な高齢者施設や集落の見落としの心配がなくなると,二次避難の意味合いが変わります.関連死リスクが高まった方が,自宅や高齢者施設,避難所などにおられたら,個別に被災地外に退避させるという個別対応での二次避難です.これは初期の集団での二次避難とは異なります.二次避難によって生活環境が改善するかどうかを判断するときは,ライフラインなどの物理的な環境だけではなく,人間関係などの社会的な環境も含めて判断する必要があります.


2024年1月14日(日)奥村執筆

災害関連死は,死亡原因が非常に多岐に及びます.また,同じ死亡原因でも,そこに至るプロセスは持病や介護の有無,生活環境などによって大変複雑です.しかしながら,下の図にある黒枠内に記載されている問題を一つひとつ改善すれば災害関連死のリスクを下げることができます.避難所で生活されている方も,自宅や高齢者施設で厳しい生活を余儀なくされている方も,少しでも生活環境が改善され,命が守られることを願っています.

図1 災害関連死の発生プロセス.東日本大震災などの過去の災害を踏まえて作図.

その他,今,気になることを列挙します.
・災害発生から1週間が経過しても安心できません.70歳以上のご高齢の方は,特にご注意ください.
・このまま被災地に留まることが危険な被災者のために,安心して広域避難という選択ができるようにしましょう.
・故郷を離れることがリスクになる方もおられます.長距離移動や生活環境の変化,孤独による身体的精神的な負担に注意しましょう.


令和6年1月1日16:10に発生した「令和6年能登半島地震」を受けて,各種メディアでコメントをしています.閲覧,視聴できるもののみ以下にリンクを貼りますので,こちらもご活用ください.

新聞:
2024年1月15日産経新聞 コラム記事(奥村執筆)「能登地震の災害関連死を防ぐには
2024年1月09日朝日新聞デジタル「災害関連死、100人以上の可能性も 自宅にとどまる被災者も要注意
2024年2月01日産経新聞デジタル「北陸以外への2次避難「ゼロ」 2万人分超が未利用、地元での確保急務に
2024年3月31日時事ドットコム「「災害関連死」43人以上申請 被災3カ月、さらに増加も―識者「継続的に警戒を」・能登地震

テレビ:
2024年1月12日 news23,関連死をどう防ぐか

ラジオ / radio:
2024年1月31日 NHK world,”ONE MONTH AFTER THE NOTO EARTHQUAKE” (available until the end of Feb. 2024)
2024年2月05日 ラジオ大阪OBC「生活拠点と関連死」(学生と出演)
2024年2月12日 ラジオ大阪OBC「食と関連死」(学生と出演)
2024年2月19日 ラジオ大阪OBC「介護と関連死」(学生と出演)
2024年2月26日 ラジオ大阪OBC「支援者と関連死」(学生と出演)