2026年5月29日[銀7原子のナノクラスターが「暗闇でもNIR光照射の下でも」がん細胞を攻撃―新しいがん治療戦略―] ACS Nano 誌(ACS)に論文アクセプト

D. Manoharan, K. Yamamoto, L.-C. Chang, C. Kurihashi, I. Osaka, Y.-F. Liu, S.-W. Liang, H. Kawasaki*, W.-P. Su*, C.-S. Yeh*
Ultrasmall Ligand-Protected Ag₇ Nanoclusters Enable Dual-Mode Reactive Oxygen Species Generation under Dark and Near-Infrared Irradiation
ACS Nano, 20,16118–16134(2026)

本研究グループは、銀原子わずか7個からなる超微小粒子(Ag₇ナノクラスター、粒径約 1nm)が、光の有無にかかわらずがん細胞を傷つける活性酸素を発生させることを実証しました。

この粒子は、がん組織に存在する過酸化水素を自律的に分解し、暗闇の中でもヒドロキシルラジカル(•OH)と酸素を産生します。さらに近赤外光の照射によって、産生された酸素を利用し一重項酸素(¹O₂)を追加発生させます。二種類の活性酸素を状況に応じて使い分けるこの「二刀流」機能により、化学療法と光線力学療法を一粒子で同時に実現しました。

X線光電子分光(XPS)分析により、活性部位が消耗されず触媒として繰り返し機能することも確認されました。また、粒子サイズが極めて小さいため腎臓から速やかに排泄され、高い生体安全性を示しました。動物実験では腫瘍の退縮と転移抑制が確認されました。

原子数が精密に制御された本ナノクラスターは、分子レベルで設計可能なナノ材料として、将来的な精密がん治療への応用可能性を示すものです。

本研究は、富山県立大学 大坂一生教授、国立成功大学(台湾)のChen-Sheng Yeh教授および国立成功大学病院(台湾)のWen-Pin Su教授との国際共同研究です。