産経新聞コラム「コロナ禍に求められる力と防災」

R03.01.18:産経新聞「コロナ禍に求められる力と防災」夕刊3面,関大社会安全学部リレーコラム


コロナ禍に求められる力と防災

先日,災害メモリアルアクションKOBEという阪神・淡路大震災のメモリアル行事に参加してきました.この行事は阪神・淡路大震災1年の節目に第1回が開催されから毎年1月に開催されています.今年は26回目でしたが,新型コロナウイルスの感染拡大を受けて開催が危ぶまれました.しかし,対面とオンラインのハイブリッド形式で開催されました.

ちょうど1年前にコロナ問題が顕在化してから,私たちの生活はさまざまな制約を受けています.読者の皆さんもいつも通りにできないことの連続で,フラストレーションが蓄積していることでしょう.上記の行事は形を変えて開催されましたが,中止せざるを得ないこともたくさんあります.コロナ禍の暮らしとは,まさにこうした判断力が求められます.「これまでもやっていたからなんとなくやる」が許されません.そして,如何にこれまでそうした「なんとなく」が多い生活を送っていたのかと驚かされます.

いつも通りにできない場面で判断を下すときに大切になるのが,その活動の目的が何であったのか,いつもと同じタイミングで,いつもと同じ方法で実施しなければならないのか,といったことです.このプロセスの中で,より魅力的になった活動もあるでしょうし,不要な活動として実施そのものが見直された活動もあるでしょう.

話を戻しますが,災害メモリアルアクションKOBEという行事も,同じようなことを行っています.つまり,阪神・淡路大災害の教訓として取り組まれてきたこと一つひとつに注目し,その目的は何であったのか,方法は妥当なのか,効果は出ているのかを丁寧に検証しています.「なんとなく」は許されません.それではこの震災から学び次に活かすことができないからです.

阪神・淡路大震災から26年.「未災者」が大震災を知り,さらに「未災者」に伝え,つないでいく時代に求められる能力は,コロナ禍にも不可欠な能力なのです.

(産経新聞夕刊令和3年1月18日掲載)

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