📘 第1章を書く前に知っておいてほしいこと
卒業論文の第1章は、あなたの研究が「どんな問題に向き合い」「これまで何が分かっていて」「この論文で何を明らかにするのか」を示す、大切な章です。最初から完璧に書く必要はありません。研究が一通りまとまった 最後に書き直す ことで、論文全体がぐっと一貫したストーリーになります。プロの研究者でも、第1章は最後に仕上げることがよくあります(私もそうです)。
📚 1.2 既往研究の整理は、卒論の“心臓部”です
これまでの研究(先行研究)を丁寧に読み、何が分かっていて何が課題なのかを整理することは、論文の質を決める最も重要なプロセスです。近年は DeepResearch などのAIツールの登場により、学部生でも高度な文献(英字論文を含む)探索に挑戦しやすくなりました。
・先行研究の“地図”を理解できる
・研究の新しさ(ギャップ)が見つけやすい
・自分の研究が学術的にどの位置に立つのかが分かる
研究の質を高める最も確実な方法は、背景を長く書くことでも、結果を増やすことでもなく、「既往研究」を丁寧に整理することです。ぜひ挑戦してみてください。
🎯 研究目的は「達成可能で、検証できる」形で設定すること
卒論ではときどき、「将来の災害による犠牲者を減らすことを目的とする」のように、その論文だけでは達成できない大きすぎる目標 が書かれることがあります。しかし研究目的は、その論文で実際に検証できる範囲で設定することが重要です。たとえば:
・「○○の傾向を明らかにする」
・「△△の要因をデータから検証する」
・「□□の特徴を整理し、課題を示す」
など、この研究で到達できる現実的な目的であるほど、論文は読みやすく、評価も高くなります。「大きな目標」を掲げることと、「研究目的」は別物です。大きな目標は志(モチベーション)として大切にしつつ、論文上の目的は、検証可能な範囲にしっかり収めましょう。
🔎 第1章は“論文の進行表”です
第1章には、以下の内容を簡潔にまとめます。最初にざっくり書いてから、最後にストーリー全体に合わせて書き直すと完成度が高まります。
1.背景(なぜこのテーマが重要か)
2.既往研究の流れ(何が分かっており、何が未解明か)
3.本研究の目的(この論文で何を明らかにするか)
4.論文の構成(どの順で説明するか)
詳しくは,以下の内容を参考にして,書いてみてください.
1.1 研究背景(750〜1,500字:0.5〜1ページ)
🔍【ここに書くこと】
・このテーマが社会的に・学術的に重要である理由
・研究対象(地域・現象・集団など)の特徴
・なぜ本研究を行う必要があるのか(問題意識)
✏️【書き方のコツ】
・「なぜこのテーマを扱うのか?」を読者が自然に理解できるように書く
・できれば 社会の現状 → 課題 → 研究の必要性 の順が読みやすい
📝【書くときのヒント】
・ニュースや統計など“外的背景”を書くと説得力が増す
・「○○で問題が生じている → だが□□が不足している」という形にすると流れが良い
1.2 既往研究の整理(1,500〜3,000字:1〜2ページ)
🔍【ここに書くこと】
・テーマに関わる主要な概念や定義の紹介
・過去の研究がどのような成果を挙げてきたか
・過去研究にどのような不足(ギャップ)があるか
✏️【書き方のコツ】
・「〜の研究ではAを明らかにした」「しかしBは十分に検討されていない」の形が使いやすい
・DeepResearchも活用してみましょう.(どのようにプロンプトを書くかが重要)
📝【皆さんが迷いやすいポイント】
・「文献を要約する場所」ではありません!
👉 “自分の研究の必要性を示すために文献を紹介する場所”
1.3 本研究の目的と意義(400〜750字:0.3〜0.5ページ)
🔍【ここに書くこと】
・本研究で“何を明らかにするのか”を一文で
・本研究の独自性(データ,手法,視点)
・研究がどのような貢献をしうるか(学術的 or 実務的)
✏️【書き方のコツ】
・必ず「本研究は〜を目的とする」という文で書く
📝【例(形だけ参考に)】
・本研究の目的は,○○を分析し,△△を明らかにすることである.
1.4 本論文の構成(200〜300字:0.2ページ)
🔍【ここに書くこと】
・第2章〜第5章で何を述べるかを簡潔に説明
✏️【書き方のコツ】
・ここは短くてよい(読む人の“地図づくり”)
📝【例(形だけ参考に)】
・本論文は,次のように構成される.第2章で調査(または分析)手法を述べ,第3章でその結果を示し,第4章で考察を行い,第5章で結論をまとめる.
🔍 【丁寧に書いた方が良い場合(例示)】
以下に該当する場合は,より詳しい構成説明(3〜5文程度)を書くことを推奨します.
◆ (1)複数の調査やデータを扱う場合
例:
・アンケート+インタビュー
・SNS投稿+新聞記事
・現地調査+文献調査
👉 手法やデータが複数ある場合,読者が流れを見失いやすいため,各章の役割を少し丁寧に説明する必要があります.
◆ (2)分析ステップが複数に分かれる場合
例:
①形態素解析 → ②頻度分析 → ③共起ネットワーク
①分類 → ②比較 → ③時系列分析
①現状整理 → ②要因分析 → ③課題抽出
👉 ステップが多い場合,図を用いて,それらのつながりを明示すると親切です.
◆ (3)論文の結論が複数の視点を含む場合
例:
・「○○の影響」「△△の特徴」「□□の政策的含意」など複数の論点を扱う
・比較研究で結果が複数の観点に整理される場合
👉 結果が複層的なので,構成図を読者に先に示したほうが理解が深まる.
📝 丁寧版の例(3〜5文)
本論文は次の構成となっている.第2章では,本研究で用いるデータの特徴と分析手法を説明する.第3章では,SNS投稿と新聞記事のデータをそれぞれ分析し,その特徴を整理する.第4章では,得られた結果を比較し,本研究が示す意義について考察する.第5章で結論を述べ,本研究の成果と今後の課題を示す.