災害関連死を防ぐために,発災直後の今,参考にしていただきたい情報
2026年7月28日,熊本県で最大震度7を観測する大きな地震が発生しました.
被災された皆さまに,心よりお見舞い申し上げます.
津波注意報はすでに解除されています.今後は,大きな余震の発生に加え,厳しい暑さの中での避難生活による体調悪化,災害関連死の発生,さらに大雨や台風などが重なる複合災害にも警戒が必要です.
このページでは,これまで総合防災・減災研究室(奥村ゼミ)が公表してきた情報の中から,地震発生から間もない現段階で,災害関連死を防ぐために参考にしていただける記事や資料を紹介します.
将来の災害に備えるための事前防災に関する情報ではなく,現在,被災地で避難生活を送っている方,そのご家族,地域で支援にあたる方,行政,医療・保健・福祉関係者などに,災害発生後の今,読んでいただきたい情報を中心に選んでいます.
発災直後の今,特に注意していただきたいこと
地震による建物の倒壊や負傷から命を守ることに加え,災害後には,避難生活の負担によって体調を崩し,亡くなる「災害関連死」を防ぐ必要があります.
今回の地震は,厳しい暑さが続く真夏に発生しました.
避難所にいる方だけでなく,自宅,車内,親族・知人宅,福祉施設,医療施設などで生活している方についても,暑さや生活環境の変化による体調悪化に注意してください.
暑さを我慢しないでください
停電によってエアコンや扇風機が使えない場合は,暑さの厳しい自宅で無理をせず,建物や周辺の安全を確認したうえで,空調を使用できる場所への移動を検討してください.移動先は,被災地内の避難所や公共施設などに限りません.安全に移動できる状況であれば,被災地外の親族宅や友人宅なども選択肢になります.
また,足を伸ばして休むことができ,安全な場所に駐車できる自動車であれば,車中泊も現実的な選択肢の一つです.その場合は,長時間同じ姿勢を続けないこと,こまめに水分を取ること,定期的に体を動かすことが大切です.
高齢者は,暑さや喉の渇きを感じにくいことがあります.本人が「大丈夫」と話していても,室温,水分摂取,食事,排尿,睡眠,服薬などの状況を,周囲の方が確認してください.
避難所にいない方にも目を向けてください
被災者は,指定避難所だけで生活しているとは限りません.
自宅,車内,テント,親族や知人の家,小規模な自主避難所,福祉施設,医療施設など,さまざまな場所で生活しています.
このうち,特に自宅,車内,テントなどで,周囲から見守られにくい状況にある方は,支援や情報が届きにくく,体調の異変にも気づかれにくい場合があります.一人で過ごしている方だけでなく,高齢のご夫婦,高齢の親子,介護する側とされる側だけで生活している世帯などにも注意が必要です.近隣に気になる方がいる場合や,車中泊を続けている方がいる場合は,無理のない範囲で声をかけてください.
一方,親族や知人の家,自主避難所,福祉施設,医療施設など,周囲に人がいる場所でも,支援する側の人手が不足していたり,暑さや停電,断水,医療・介護サービスの中断が続いたりすることで,体調の変化を十分に把握できないことがあります.生活している場所にかかわらず,食事,水分,服薬,睡眠,排せつなどの状況を継続して確認することが大切です.
水分だけでなく,食事,服薬,睡眠なども確認してください
災害後の体調悪化は,熱中症だけによって起こるわけではありません.
水分不足,食事量の減少,服薬の中断,睡眠不足,口腔環境の悪化,トイレを我慢すること,医療・介護サービスの中断などが重なることで,体力が徐々に低下する場合があります.
「まだ動けるから大丈夫」と無理を重ねず,体調に変化がみられた場合は,早めに医療・保健・福祉の支援につながってください.
片づけや復旧作業で無理をしないでください
余震が続く中での片づけ作業には,建物や家具の倒壊,落下物,ガラスなどによるけがの危険があります.
さらに,暑い中での作業は,熱中症だけでなく,心臓や血管にも大きな負担をかけます.
休憩を取り,水分と塩分を補給し,一人で作業を抱え込まないでください.体調に違和感がある場合は,直ちに作業を中止してください.
発災直後の今,参考にしていただきたい記事・資料
1.避難所だけではない――自宅や車内を含む生活拠点で関連死を防ぐ
「熊本地震10年 災害関連死と問われる日常」
2016年熊本地震では,多くの方が指定避難所だけでなく,自家用車や自宅など,さまざまな場所で避難生活を送りました.車中泊や在宅避難そのものが問題なのではありません.重要なのは,それぞれの場所で,被災者に大きな負担がかからない生活環境を確保できているか,必要な物資や医療・福祉の支援が届いているか,周囲の目が届いているかということです.
また,災害関連死は,高齢者や持病のある方だけに起こるものではありません.震災前には自立して生活していた方も,避難生活の中で無理を重ね,体調を崩すことがあります.今回の地震を受けて,最初に読んでいただきたい記事です.
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2.身近な声かけと多様な支援で関連死を防ぐ
「災害関連死を防ぐために――『多様な関与』が生み出す新しい防災のかたち」
災害関連死を防ぐためには,指定避難所の環境を整えるだけでは十分ではありません.停電によって空調,水道,エレベーターなどが停止すれば,建物が倒壊していなくても,自宅での生活を続けることが難しくなる場合があります.一方,在宅避難者や車中泊をしている方などは,周囲の目が届きにくく,体調の異変に気づかれるのが遅れるおそれがあります.
行政,医療,保健,福祉の専門職だけでなく,家族,近隣住民,地域団体,企業,ボランティアなど,さまざまな人が無理のない形で関わることが重要です.食事,服薬,睡眠,口腔ケアなど,発災後の生活の中で確認すべき事項や,周囲の方への身近な声かけについて考える記事です.
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3.真夏の停電による熱中症や体調悪化を防ぐ
「南海トラフ巨大地震に伴う長期停電と災害関連死」
この資料は南海トラフ巨大地震を対象としたものですが,真夏に発生した今回の地震において,停電による体調悪化を防ぐためにも参考になります.夏季の災害では,停電によってエアコンなどの空調設備が停止することが,熱中症や持病の悪化につながるおそれがあります.特に,高齢者,持病のある方,医療機器を使用している方,福祉施設や医療施設で生活している方については,電力の確保が命に直結します.また,非常用発電設備が設置されていても,設備の故障,燃料不足,点検・整備の状況などによって,長期間使用できない可能性があります.停電している地域で何を確認し,どのような対応を取るべきかを考えるうえで参考となる資料です.
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4.関連死は,どこで,どのように発生するのか
「南海トラフ巨大地震に伴う災害関連死」
この資料は南海トラフ巨大地震を対象としたものですが,過去の災害で災害関連死がどのような場所や状況で発生したのかを理解するために参考になります.災害関連死は,指定避難所だけで発生するものではありません.過去の災害では,自宅,車内,病院,高齢者施設,避難先の親族宅など,さまざまな場所で災害関連死が発生しています.避難所だけでなく,在宅避難者,車中泊者,医療機関や福祉施設で生活する方を含めて,地域全体を見守る必要があることを示す資料です.行政,医療・保健・福祉関係者,支援団体,報道関係者の方にも参考にしていただきたい内容です.
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5.被災地にとどまるか,被災地外へ移るかを考える
「災害関連死と復興――能登半島地震から考える」
令和6年能登半島地震では,被災地にとどまる場合には,停電,断水,医療・介護サービスの途絶などの中で生活しなければならず,被災地外へ移動する場合にも,長距離の移動や不慣れな環境での生活による負担が生じました.
被災地にとどまることと,被災地外へ一時的に移ることのどちらにも,健康上のリスクが生じる可能性があります.被災者本人の健康状態や生活環境,被災地内で受けられる支援などを確認しながら,どこで生活することが最も安全なのかを考える必要があります.今回の地震における避難生活や支援のあり方を考えるうえでも,参考となる記事です.
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6.関連死の発生規模を,いつ,どのように見極めるのか
「本気の事前防災,本気の災害対応で災害関連死問題に挑む」
今後,災害関連死がどの程度発生する可能性があるのかを早期に予測できれば,必要な支援体制の確保や重点的な対策につなげられる可能性があります.私たちのこれまでの研究から,災害関連死の発生規模は,最大避難者数の規模と一定の関係があることが分かっています.そのため,最大避難者数は,発災後の比較的早い段階で災害関連死の発生規模を見通すための重要な指標の一つとなります.
一方,発災直後の現段階では,今回の地震による最大避難者数がどの程度になるのかは,まだ分かりません.避難者数が最も多くなる時期や,その全体像を把握できるようになるまでには,数日を要します.そのため,現時点で今回の地震による災害関連死の発生規模を推計することは困難です.また,最大避難者数を用いた予測には限界があります.被災地域の高齢化,停電や断水の長期化,医療・介護サービスの中断,支援の届きにくさなど,過去の災害とは異なる厳しい条件が重なった場合には,予測を上回る災害関連死が発生する可能性もあります.
ただし,推計値が示されるのを待ってから対策を始めるのでは遅すぎます.災害関連死を防ぐための見守り,生活環境の改善,医療・保健・福祉支援,停電や暑さへの対応は,発災直後の今から始める必要があります.
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周囲の方への声かけ
災害時には,「自分より大変な人がいる」「周囲に迷惑をかけたくない」と考え,体調が悪くても我慢してしまうことがあります.暑さ,食事,水分,服薬,睡眠,排せつ,口腔環境などに不安がある場合や,普段と違う体調の変化がある場合は,周囲の方や避難所の担当者,医療・保健・福祉関係者に伝えてください.
また,周囲に気になる方がいる場合は,
「水分は取れていますか」
「食事はできていますか」
「薬は足りていますか」
「昨夜は眠れましたか」
「暑くありませんか」
「困っていることはありませんか」
と声をかけてください.
小さな声かけが,深刻な体調悪化を防ぐきっかけになります.大きな余震,建物や家具の倒壊,土砂災害,今後の大雨などにも注意し,自治体や気象庁などが発表する情報を確認してください.
一人で無理をせず,周囲で支え合いながら,安全な生活環境を確保してください.