
こんにちは。奥村ゼミ3回生の松本です。
先日、「災害メモリアルアクションKOBE2025」に参加しました。このイベントの中で、私たちの研究室を含めて10団体が日頃の活動を発表しました。そこで得た学びを、私の卒論のテーマである「災害ボランティア」の視点から整理してお伝えします。
滋賀県立彦根東高等学校 新聞部の発表:「風化」について考える
彦根東高校の新聞部は、東日本大震災をきっかけに「彦根東高校新聞」の「福島号」を毎年発行しています。能登半島地震後には、能登半島地震に関する特集号を発行されたそうです。今回の発表テーマは「風化」についてでした。
発表では、「災害を風化させないこと」は正しいのか、被災者の心情を考慮すると一概に正しいとは言えないのではないか、という問題提起がされました。これに対して、フロアーにいた参加者からの以下のコメントが印象的でした。
「風化そのものを恐れる必要はない。風化とともに新しい文化や活動が生まれてくる。実際、東日本大震災では報道の頻度は減ったが、伝承館が設置されたり、防災活動が活発に実施されるようになった。」
私自身も能登半島地震の被災地を継続的に訪問する中で、風化の進行を実感しています。2025年1月時点でも避難所生活を続ける人々や、復旧できていない道路が残っていますが、そのような報道は減少しているため、世間的には「復旧が進んでいる」という印象が強まっているのではないでしょうか。寄付や支援の継続、観光客の呼び戻しを考えると、被災地の現状を適切に伝える報道が不可欠だと感じます。一方で、復旧が一定程度進んだ段階では、前述の参加者の意見のように風化を受け入れることも必要になると考えました。
神戸学院大学 現代社会学部 安富ゼミ:行政と住民のすれ違い
安富ゼミは、能登半島地震の発生を受けて、被災した輪島市を事例にして、行政職員と住民の意見の相違を調査し、その結果を発表していました。
行政側の意見:
・公助に依存せず、被災者の自助を進めてほしい。
・職員が不足している。費用などがネックで居住施設を確保できず、支援に来る人員の受け入れ人数が限られている。
住民側の意見:
・高齢化の進む地域では公助が不可欠。
・行政が閉鎖的で、住民の声が届かない。
このような意見の違いが軋轢を生み出しているとのことでした。解決策として、話し合いの場を設ける必要があると指摘されていました。
筆者は、宮城県女川町の事例を思い出しました。私はこれまでに何度もこの町を訪れています。このまちは行政と住民がうまくコミュニケーションをとりながら、住民主体で復興を進めています。行政は住民からの意見を柔軟に受け入れ、また、若者を中心にまちづくりが行われています。女川町には原子力発電所による財政的余裕があり、また「復興連絡協議会」が設立されるなど、行政と住民を繋ぐ仕組みが存在していました。輪島市ではこのような仕組みが未整備であり、今後、ふるさと納税などを活用した財政支援やNPOなどの支援に基づく住民主体の復興が必要だと感じました。
兵庫県立大学 学生災害復興支援団体LANの発表:ボランティア活動の課題
LANの発表では、福島と能登を比較し、ボランティア活動に焦点が当てられていました。
能登半島地震ではただでさえ少ない道路が寸断されたため、個人ボランティアの受け入れが一時停止し、他の災害対応が優先されました。この判断について、LANは「初動での制限は理解できるが、ファーストペンギンとなるボランティアの存在も重要」と指摘していました。
私は2024年2月からずっと災害ボランティアに参加しています。初期の段階では、1日あたり20人というボランティアの受入人数は募集開始から2、3分で埋まる一方で、夏頃になると1日あたり50人の受入人数は、平日には埋まらなくなっていました。現地に宿泊拠点がないため活動時間にも大きな制約がありました。この経験を通じて、発災直後のボランティアの受け入れ体制の改善や、平日も含めた継続的なボランティア人員の確保が課題であると痛感しました。
おわりに
今回の参加を通じて、「災害の風化をどのように捉えるべきか」「行政と民間をどう繋げるか」「ボランティアの受け入れの課題をどう解決するか」といった重要なテーマについて深く考える機会となりました。
災害ボランティアについて研究する身として、単にボランティア参加者を増やすだけでなく、継続的かつ効果的な活動を実現するための方策も検討していきたいと思います。
