表題のシンポジウムが開かれ、
当研究室の林が代表を務める「景観と防災まちづくり」研究グループも、1セッションを担当いたしました。
(オンライン開催でしたので、例によって画像はありません)
3年間の研究期間の最終年度となる今年度は、これまでの取りまとめという意味も兼ねて、
グループメンバーそれぞれが取り組んで来た内容と、
まちづくり =人間活動・自然物・人工物の関係を再編し、Resilience(災害時強靭性)とComfort(日常での快適性) を両立できる社会を構築する
というグループテーマにまつわるパースペクティブを披露し、限られた時間でですが総合討議をする…
という仕立てで行いました。
グループメンバーは、関西大学都市システム工学科の、
石垣泰輔先生(水防災工学)、
尾崎平先生(環境マネジメント)、
安田誠宏先生(海岸)、
そして林(景観・土木史)でした。
林からは、「京都鴨川の河川改修の歴史 ―風致と治水の両立という視点から―」のタイトルで発表し、
鴨川の河川改修計画が、戦前・戦後と、他に例を見ないほどの情熱と知識を動員し、
各時代において最先端と言える計画・設計技術や協議の枠組みをもって検討されてきたことを指摘しました。
しかしそれが戦後の改修計画で世論に受け入れられなかった原因を考察し、
鴨川の風景美や審美的態度を、流域や生態系への意識、社会の持続可能性なども包含して再編集していくことによって、
それを超克できるのではないか、と問題提起いたしました。
4人の発表を通して感じたのが、私の発表もそうですが、
防災も含めて人々の「暮らし方」「生き方」を議論するには、「景観」という枠組みは適切ではない、
もっと新しい概念が必要なのではないか、ということでした。
どうしても、「景観」と言った時点で、「見た目の良さ」「環境のかたち」から、
卑近な例では「緑化」「修景技術」といった方向に誤解されてしまう気がします…
(景観分野の成り立ちを知っている者としては、必ずしもそうではないと思っていますが、
しかしなかなか真っ向から否定しがたい部分もある。
私も普段、あまり「景観」という言葉は使わないなあと思っています)。
この問題については、特に景観の人間だけではなくて、他分野の方と一緒に考えていった方がいい部分もあるので、
研究グループはいったん終了しますが、折に触れ考えていきたいなと思いました。
(林)