第41回土木史研究発表会@Zoom・優秀講演賞(一般)

6/19(土)-20(日)の第41回土木い研究発表会が、Zoomにて開催されました。
当研究室からは、「災害」のセッションにて以下の発表を行いました。

林倫子「大正期の京都府における水防組織の再編―伏見町外十ヶ町村水害予防組合と久我村外四ヶ村水害予防組合に着目して―」

先の記事にも書きましたが、この研究テーマは2018年度に開催された同発表会にて発表をした、
「大正期の京都府における水防強化―大正6年10月水害における久世郡の水防と淀川木津川水害予防組合設立に着目して―」を
対象地を拡大する形で、論を補強しようと試みたものです。
今日、改めて見直されている「水防社会」という概念を念頭に、
地域社会からみた近代治水と近代水防の関係性を描き出したいという思いですが、
発表会を通じて、同じように考えている方がたくさんいらっしゃるということがわかりました。

近代の水環境については、河川(=土木)側の論理と農地(=農林)側の論理がまずあって、
かつ行政側の論理と地域側の論理があって、それぞれの立場でかなり見方が変わってくる、
そこに近代的技術発展や施設整備がどのように絡んでくるか、という意味で大変ダイナミックです。
(これは岐阜大出村先生の、岐阜の論文などでも指摘されていることですが)
滋賀県にて水害履歴調査(地域のオーラルヒストリーの収集)に携わっていることもあり、
私は特に、「水防」のあり方について考えてみたいと思っています。

学会シンポジウムで、名古屋大の中村晋一郎先生や九州大の島谷先生がしきりと
「土木史はバックキャスティングな側面を持つ学問である」
「現代のように既存の価値観や前提条件が通らなくなった時代には、それらがどのように形成されてきたのかを
 歴史的視点から振り返り、それを超克する必要がある」
というお話をされていましたが、流域治水、水防災意識社会など、
原点回帰のような政策をバンバン打ち出している我が国の河川行政には、今まさに土木史研究が必要なのでしょうね。
河川に関する研究発表は近年の土木史研究の主流のひとつとなっていると思いますが、
微力ながら、今後も水と社会のあり方について考えるような土木史研究を進めていきたいと思っています。

今回の受賞に関しては、個人的に、お二方に厚く御礼を申し上げたいと思います。

まず、当研究室2019年卒の山本耕士朗君です。
彼の卒論による調査が、この研究の礎の一つとなっています。

そして、元神戸大学の神吉和夫先生です。
先生は、3年前の2018年の発表会時の当方の発表をフロアで聞いてくださり、
終わったときに、今回用いた資料の一つを授けてくださいました。
私の不徳の致すところで3年も時間がかかってしまいましたが、先述の山本君の力も借りて、何とか一部解釈に成功しました。

3年前の今回の原稿、そしてもう少し追加調査の可能性も追いつつ、
これまでに判明したことの取りまとめ方を考えて行こうと思います。
(林)