6/22(土)-23(日)第39回土木史研究発表会

6/22(土)-23(日)に日大で開かれた第39回土木史研究発表会
M2栢原と林が参加・発表いたしました。


まず、発表会前日の恒例エクスカーション。

国史跡 常盤橋門跡・常盤橋の解体修理工場現場の見学に参加しました。
江戸城外濠の正門跡に位置する常盤橋は、文明開化期(明治10年)に築造された石造アーチ橋です。
東日本大震災により、損傷・変形したために平成25年頃から修復に向けた取り組みが実施されています。

今回普段見られない修復現場や作業の内容を見学させていただき、
「とてつもない手間暇、お金がかかっているなぁ」と率直に感じました。
常盤橋は、かつて周辺住民の保全運動により解体?を免れたという背景があるそうです。
つまり、良いもの・価値あるものが簡単に残っているのではなく、
「残そう」という人々の気持ちが働いたために残っているのです。
こういう動きがないまま無くなっていった土木構造物も多いのではないのでしょうか?
しかし常盤橋は時代を超えてもなお、そのデザインや歴史的背景を踏まえた修復が行われています。
貴重な現場を見学でき、土木史実・遺産的価値を後世へ伝えていくことの重要性を再認識させていただきました。
(M2 栢原)


発表会では、当研究室からは以下の2編の論文を発表しました。


栢原佑輔・林倫子・荻野幹・谷川陸,戦前の鴨川改修計画における河川構造物の風致維持手法とその継承実態
(6/22(土)14:10~、「河川・水利」セッション)

発表・質疑応答ともに満足いくものではありませんでしたが、貴重なご意見やお褒めの言葉をいただき、大変嬉しく思います。
今回は調査段階の発表でしたので、引き続き資料収集および分析を行いより、土木学会論文集への投稿を目指したいと思います。
(M2 栢原)



林倫子,土木史研究としての水害オーラルヒストリー調査の成果と意義―滋賀県水害履歴調査の経験を通して―
(6/23(日)9:00~、「災害と土木史①」セッション)

この発表で「優秀発表賞(一般)」を頂きました。
ありがたいことに、学生時代からたびたびこの賞を頂戴してまいりましたが、もしかしたら今回が一番うれしかったかもしれません。
といいますのも、今回の発表はこれまでのような「史実」部門の研究ではなく、
自身のこれまでの聞き取り調査結果をもとにした論説形式の論文だったからです。
全く自信がなく、当たって砕けろ!!!の精神でしたが、発表を評価していただき、有用な批判を数多く頂き、
また多くの方々に活動を応援していただきました。

この発表テーマである「滋賀県水害履歴調査」は、立命館大学・関西大学の林の研究室の歴代学生(ほぼ全員が4回生!)が
文献調査やヒアリング、取りまとめ、報告会と助力してくれてきたもので、みんなの作品でもあります。
今回の発表のために各地のマップを何度も見返しましたが、悩みながらも頑張って作成していたみんなの顔が今も思い浮かびます。
澤本君、野々山君、鈴木君、壷井君、昌子君、坂本君、市来君、栢原君、濱田さん、2018年関大景観研1期メンバー、ありがとう。

そして、この調査にご協力くださった地域の方々にも、改めて御礼を申し上げます。
水害履歴調査は「過去の水害履歴」を明らかにすることですが、これはこれからの未来の防災に資する活動であると信じています。
しかし、過去が直接的に未来の役に立つとは限らないですし、また調査の限界や私の能力の限界もあり、
地域の防災について必死に考えていらっしゃる地元の皆様のご要望に、十分に応えられていない部分もあるかと思います。
しかし「歴史研究」としての蓄積は出来得る限り果たし、何か突破口を見つけようとする努力は続けていくつもりです。
これからもどうぞご協力いただけましたら幸いです。

この土木史研究発表会の優秀発表賞ですが、土木史の若手研究者育成を願う篤志家からのご寄付をうけ、
今年から受賞者は賞金を頂けることになりました。
寄付者さまに直接御礼を申し上げられないので、なんとか謝意を示したいと思い、ここに記します。ありがとうございます。
他の受賞者(若手研究者部門)である国総研の岩本君とも話しておりましたが、
自身の研究にプラスになる用途を考えて、ありがたく使わせていただきます。
土木史分野の若手は少人数ではありますが、先輩の諸先生方に温かく見守られていることを、毎年の発表会で実感します。

土木史研究を続けていくことは、よく言われているような困難も確かに多いですが、
いい意味で「楽観的に能天気に(by名大中村晋一郎先生)」、自分が楽しいこと・必要だと思うことを、愚直に粛々と続けていき、
仲間を増やしていきたいと思っています。これからも叱咤激励をよろしくお願いいたします。


最後になりましたが、来年度の土木史研究発表会は、わが関西大学開催予定です!
日程が例年と少し異なり、7月開催の予定となっておりますのでご注意ください。
皆様、ぜひ千里山にお越しくださいませ。
(林)