【活動報告】ホンネで語ろう「ぼうさい」イブニングカフェ in 大阪|2025年開催

こんにちは!奥村ゼミ4回生の保田香音です。
先日、日本自然災害学会主催の「ぼうさいイブニングカフェ in 大阪」に参加させていただきました。これは、自然災害に関するさまざまなトピックについて、ざっくばらんに語り合う場です。今回はその一環として、南海トラフ巨大地震に備えた大阪湾沿岸の防災・減災の取り組みについて、現地の施設を見学しながら、現場で働く方々と意見を交わし、理解を深めるフィールドワークが行われました。

1.津波・高潮ステーション

まずは集合場所でもあった「津波・高潮ステーション」を見学しました。
館内には、大阪の土地の低さを実感できる展示や、大阪の街を舞台に津波を体感できるシアターなどがありました。

▶時間の関係でじっくり見ることができなかったので、再度訪れたいと思います(入館料は無料です!)。

海面と同じ高さに立つと、2階の窓の向こうに子ども部屋が見える――。大阪の地盤がいかに低いかを実感できる、津波・高潮ステーションの体験型展示。
2.木津川水門

続いて、バスで木津川水門の見学へ。
台風21号(2018年)の際には、高潮警報の発表を受けて水門を閉鎖し、大規模な浸水を防ぐことができたとのことです。現在は「新木津川水門」の建設が進められており、日本で初めて気候変動に伴う海面上昇を踏まえた設計が取り入れられているそうです。

現在の木津川水門
工事中の新木津川水門
3.中之島GATEと船上視察

次に、中之島GATEへ移動しました。私たち学生はバスで、教授陣は船での移動でした。
船上視察の様子(奥村先生編集):[動画リンク]

こちらが先日オープンしたばかりの中之島GATEです。BBQが楽しめるレストランや船着き場などを備えた、にぎわい創出型の新しい施設です。視察の道中、大阪治水事務所の方から「防潮堤があることで大阪の街が暗くなってしまうことは避けたい」という思いを伺いました。そのため、堤防にカラフルなイラストを描くアーティストを募集したり、商業施設を設けたりといった工夫がされているそうです。

▶河川から街のにぎわいをつくっていきたい、というお話がとても印象的でした。

中之島GATE
4.阪神なんば線淀川橋梁と十三の緊急用船着き場

その後は、阪神なんば線淀川橋梁の架け替え工事現場へ。
台風21号の際には、高潮によって橋桁の一部が浸水し、もし陸閘の閉鎖が間に合わなければ、河川堤防からまち側への浸水被害が懸念されました。こうしたリスクに対応するため、現在は橋の高さを引き上げ、陸閘の操作を不要にする大規模な改築工事が進められています。

続いて訪れたのは、十三の緊急用船着き場です。ここでは、防災とまちづくりの融合を目指した新たな取り組みが進められています。淀川河川敷に整備された船着き場を中心に、日本一の屋台村を目指して、BBQ施設や屋台の開業が予定されているとのことでした。

▶ちょうど夕日が差し込む時間で、目の前には梅田のビル街と阪急電車、そして淀川が一望できました。こんな景色を眺めながらBBQができるなんて本当に幸せですね。完成したら、ぜひゼミのメンバーで訪れたいと思いました。

工事中の阪神なんば線淀川橋梁
十三船着き場
5.淀川大堰・毛馬排水機場

最後に見学したのは、淀川大堰閘門と毛馬排水機場です。
これまで行き来できなかった淀川河口・大阪湾と上流部の間が、この閘門の整備によってつながり、船の往来が可能になったとのこと。
▶間近で見る閘門の迫力に、一同大興奮でした。

淀川閘門
嬉しそうな先輩

視察を終えて

今回の視察では、防災に関わる土木構造物の重要性を実感するとともに、観光やまちづくりと防災の共存を模索する方々の熱意を直接感じることができました。

先日発表された南海トラフ巨大地震の新被害想定では、死者数は従来と大きく変わりませんでしたが、防災に関する技術や構造物はこの10年で大きく進化しています。液状化や耐震性の問題に対応し、避難時間を確保するなど、数字には表れない改善が進んでいると知りました。

実際に2018年の台風21号の被害を防いだ水門を見学し、その水門によって防げた被害額(推定)を知り,改めて「土木構造物」のもつ防災力の大きさを実感しました。

これだけ立派な設備と努力があるのなら、大丈夫かも――と思う一方で、想定を超える災害への備えはやはり必要です。これからも、ハード面・ソフト面の両方から防災を考え続けていきたいと思います。