FUKKOU「災害関連死と復興 ―能登半島地震から考える」

災害関連死と復興 ―能登半島地震から考える

令和6年能登半島地震における災害関連死は、石川県内だけで469名に達した(令和8年1月30日石川県公表)。現在も多数が審査中であり、今後さらに増加する可能性がある。被災規模に対する関連死の比率は、東日本大震災の岩手県・宮城県を大きく上回る水準にある。阪神・淡路大震災から31年、関連死対策は前進してきたが、今なお根本的な解決には程遠い。

その背景には、関連死対策がこれまで「被災者支援の問題」として位置付けられてきたことがある。避難所環境の改善、物資供給の迅速化、医療・福祉体制の強靭化は不可欠であり、現場の努力は大きい。しかし、発災後の対応を中心に据え続けるだけでは、本質に迫ることは難しい。

今年1月、内閣府は関連死事例286件の死亡経緯を公表した。被災地にとどまれば停電や医療途絶の中での生活を余儀なくされ、ライフラインの整った地域へ移れば長距離移動や不慣れな環境での生活を強いられる―同災害特有のジレンマが浮かび上がる。災害直後の混乱だけでなく、時間の経過とともに変容する生活環境が生死に直結していたことが読み取れる。

日本各地で高齢化は進み、介護サービス受給者は増加を続け、令和6年度には573万人に達した。停電や断水、道路寸断によって平時の仕組みに不具合が生じれば、生活が直ちに困難になる人びとが増えている。人口減少が続くなかで、従来型の社会基盤を前提とした仕組みの維持にも無理が生じている。縮小社会に適合した再設計を伴わなければ、部分的な補修や延命的な維持では脆弱性は解消しない。こうした震災前からの社会構造の弱さが、災害後の環境変化と結びつき、関連死の背景を形成している。

発災後の被災者支援は最後の防波堤である。その前段階にある生活基盤が揺らげば、災害時に守り切ることはできない。では何を問うべきか。それは、関連死が発生しない日常の社会構造をどう築くかという問いである。

復興とは住宅やインフラの再建にとどまらない。食、移動、エネルギー、医療、福祉といった暮らしの基盤を再設計することである。防災を「守る行動」から「価値を生み出す行動」へ転換すること。高齢化対応や医療・介護の持続可能性、人口減少下での地域創生や都市と地方の関係再構築は、本来社会の挑戦領域である。事前防災として取り組むべき関連死対策は、それらを前進させる契機となり得る。

能登の復興は、失われたものの回復にとどまらず、新しい社会像を描き直す過程である。関連死を減らす社会とは、単に災害に強い社会ではない。誰もが安心して生きられ、住み続けたいと思える社会である。それは、全国各地に共通する課題であると同時に、社会をより良い方向へ進化させる創造的な挑戦である。

関西学院大学災害復興制度研究所ニュースレターFUKKOU Vol.59,令和8年4月掲載)