防災と観光の象徴、うずまるとは!?

執筆者:前川未有(奥村ゼミ3回生)

はじめに
突然ですが、皆さんはこの建物、何だと思いますか?この建物は兵庫県南あわじ市福良地区にある福良港津波防災ステーションという建物です。地元の方からは「うずまる」の愛称で親しまれています。私は、この8月以降福良のまちで2度の調査を実施し、「ギョギョタウンまちなか水族館」でご活躍の河野さんや南あわじ市の備蓄食材「そうめん」の生産者・柏木さんなど、多くの福良住民の皆さんから福良の津波防災まちづくりに対する熱い思いをお聞きすることができました。今回の調査で分かったことは、「うずまる」はそうした津波防災まちづくりの象徴とも言える建物だということです。

この建物、何だと思いますか?

さて、10月18日、福良町づくり推進協議会会長の原さんとうずまるで学習リーダーをなさっている波戸崎さんからお話をお聞きするためにうずまるにやって来ました。建物中央にある柱に刻まれた想定津波高さの印を横目で見ながららせん階段を上り切ると、目の前に大きな部屋がありました。入るとまず大型スクリーンが目に飛び込んできました。このスクリーンでは地元福良の津波浸水リスクや防災対策の取り組み、防災学習ゲームなどができるようになっていました。また、その横には津波の流れの強さを体感できる装置が設置されていました。さらに、印象的だったのは、この部屋の丸く小さな窓から見える美しい景色で、鳴門の渦潮に向かう美しい帆船、豊かな海の象徴である養殖筏、キラキラと美しく輝く海面、この街を守るために建設されている津波湾口防波堤が見えていました。

新型コロナウイルスの影響で3月からお客さんがすっかり減ってしまっていたため、このように話すのが久々だという波戸崎さんはドキドキ緊張すると言いながら椅子に腰かけられ、私たちのヒアリングは始まりました。

波戸崎さん(左)と原さん(右)

うずまるへの来館者
まずはじめに、来館者についてお聞きしました。地域の防災リーダーが中心の自治会単位の団体客などを想像していたのですが、うずしおクルーズなどの観光客などがふらっと入ってこられたり、地元の小学校の行事や遠方の小学校の修学旅行など、子供たちの訪問も多いということで、訪問客は必ずしも防災に熱心な方ばかりではないことが分かりました。

うずまるの役割
次に、お二人がうずまるの役割をどう考えておられるかをお聞きしました。様々なことをお話しくださいましたが、福良が観光と防災の両立を目指しており、その両方に貢献してもらいたいという思いがあることがよく分かりました。

福良は淡路島の南端に位置する港町で、うずしおクルーズが有名です。私が訪れた日曜日もたくさんの観光客で港周辺が賑わっていました。しかし、観光客で賑わうのは港周辺ばかりで街中への呼び込みが足りないことを問題視されているようでした。ふと、河野さんが同じ話をされていたことを思い出しました。

うずまるには「福良まち歩きマップ」が置かれており、誰でも自由に手に入ります。うずしおクルーズの待ち時間などにうずまるに立ち寄った観光客がこのマップを手にまちを散歩してくれればという狙いがあるそうです。この取り組みに防災と観光の両方の意義があることは「まち歩き観光と防災」のブログ記事で乗石さんが紹介してくれています。
※今はコロナ対策で置かれていませんが,津波防災ステーションのHPから入手できます

また、うずまるには「福良津波防災まちづくりハンドブック」も置かれています。折りたたむと胸ポケットに入るサイズのリーフレットで、津波防災日本一のまちを目指す福良の取り組みの全体像を知ることができるようになっています。また、波戸崎さんのような学習リーダーから直接説明を聞くこともできます。これは第一義的には防災の役割を果たしているといえるでしょうが、防災学習を目的に訪れる団体客などは必ず観光も楽しんで帰るでしょうから、観光にも貢献していると言えます。

さらに、うずまるフェスタ。これは福良の防災まちづくりを内外に発信することを目的に毎年9月に開催されているそうです。この行事の拠点もうずまるとなっています。観光客で賑わう港周辺にあるうずまるで開催されるため、地元の方はもちろん、観光客もたくさん参加され盛り上がる取り組みだとお聞きしました。この行事では無料でそうめんが振る舞われるそうなのですが、まさにそうめんの炊き出し訓練になっていると思いました。うずまるは「観光」と「防災」、「地元住民」と「観光客」、「港周辺」と「まちなか」の架け橋になっていると感じました。
※今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のためオンライン開催

これからどのようなまちにしていきたいか
最後に、これからのまちづくりについて原さんに語っていただきました。
「福良は1946年の昭和南海地震で津波を経験している。この津波は予想に反して小さいものであったため、これを経験したお年寄りの中には津波なんて来ても大丈夫だと思っている人がたくさんいる。しかし、その人たちも含めて、住民に危機意識を持ってもらいたい。この町全体を変えるためには、一人、二人でどうにかなる話ではない。住民全体で物事を進めて行きたい。そして、ゆくゆくは福良の町を住み良い防災日本一と言われるようなまちにしたい。」

まとめ
私は今回が2度目の福良訪問でした。どなたもとても暖かく迎えてくださり、初めて会った私にも多くのことを教えてくださいました。そして何よりも、福良をより賑やかにしたい、できるだけ津波に強いまちにしたいという共通の志を感じました。既に福良のまちが大好きになりましたし、このまちのために貢献したいなと思っています。来月の12月13日に行われる防災フォーラムにも参加する予定なので、これから、授業や就活も、ますます忙しくなってきますがうまく両立して研究を充実させていきたいです。