まだまだ分かっていない避難開始を調査する

執筆者 奥村ゼミ3回生 高井晃

11月17日(日)、淡路島南部に位置する南あわじ市で南海トラフ地震を想定した津波避難訓練が実施されました。市の想定では、阿万地区に地震後約50分で6メートルの津波が襲来します。

訓練の検証を目的に、奥村ゼミでは毎年同市阿万中西地区の自治会と合同で調査を実施しています。今年は上空から俯瞰的に人々の行動を把握する「ドローン班」と住民の皆さんと同じ目線で行動を観察する「地上班」に分かれて調査を実施しました。

私も今年は「地上班」の一員として調査メンバーに加えていただきました。メンバーは奥村ゼミから奥村先生、ドクター1年アリーンさん、学部4回生伊藤さん、3回生から高井環さん、山村さん、私、さらに防災科学技術研究所から土肥さん、京都大学から院生の上大迫さんです。

「ドローン班」は飛行計画の詳細なつめ作業を本番前日に実施します。どの地点にどのような角度でドローンをコントロールして映像を撮影するか、操縦者と監視者をどこに配置するか、などなど直前の現地の状況を踏まえた微妙な調整が必要だからです。ドローンは2機使用します。当初私は「なぜ2機なのか?」と思いましたが、先輩方からバッテリー交換による撮影中断の影響を極力小さくするためだと教わりました。撮影中断の影響を小さくする効果と安全性の両立を目指して、この手法を確立したのは奥村ゼミ1期生の今さんで、今年もその手法が使われました。ドローンが飛行するのを間近で見るのは初めてで、ドローンが離陸した際に響き渡るモーター音に少し興奮しました。

「地上班」はメンバー5人が4地点に分かれて、住民の避難行動を直接観察しました。今回の調査では住民の皆さんに質問するのではなく、自分たちで注意深く観察することによって、「何が皆さんの避難開始のきっかけになっているのか」を探りました。その結果、「時間を気にして避難行動を開始する様子」、「周りの人々が動き始めたから行動を開始する様子」、「避難場所から離れているから早めに行動に移そうとする様子」など、様々な特徴が見えてきました。

ドローン調査の最終確認

今回の調査では、私の研究対象でもある南あわじ市の福良地区にも滞在しました。宿泊させて頂いた古民家は空き家改修プロジェクトの一環として一階部分は「まちなか水族館」となっていました。福良は観光客向けにたくさんの美味しい店が立ち並んでおり、今回の調査の空き時間にもジェラートやシフォンケーキを食べました。どれも美味しかったのですが、特に最高だと思ったのが、夜ご飯に食べた焼肉とお鍋でした!

宿泊した古民家の一階は水族館!?

調査に参加したことで、住民の皆さんが避難行動を開始するとき、どのような会話が行われているのか、周りはどのような雰囲気なのか、その雰囲気が避難開始にどのような影響を与えているのかなど、実感を持って感じることができました。避難開始のプロセスは多様でしたが、周りの人が避難したから自分も避難しようといった同調性バイアスと言えるような特徴は多くの場面で共通して観察されました。

また今回は訓練なので避難中に危険にさらされることはないのですが、実際の災害の場合には家が倒壊して逃げることが出来なかったり、避難経路が塞がれたりと訓練で想定されていなかった状況が起こり得ます。そのようなことも考慮して、安全に避難し住民の命が守られるために、私たちは何かしらの有用な研究成果を出していかなければならないと思いました。南あわじ市に滞在中は、美味しいものを食べたり、住民の皆様に温かくして頂いた分、今度は私たちが住民の皆さんのために安全・安心を届けるという恩返しをしなくてはならないと感じました。

翌日の調査に備えて充電中