初の「後発地震注意情報」、厳冬期の避難対策に日常から備えを
12月8日深夜,青森県東方沖を震源とするマグニチュード(M)7.5の地震が発生しました.津波警報が発表され,避難は厳冬期の深夜という厳しい条件の中で行われました.自動車で避難する人が多かったとみられ,北海道や青森の各地で渋滞の発生が報告されています.厳冬期に徒歩で避難した場合,その後の居場所にリスクがあることを住民が織り込んで行動した結果かもしれません.
この地震を受けて,「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が運用開始後初めて発表されました.巨大地震の可能性が相対的に高まったとして,7日間,注意を呼びかけるものです.将来の巨大地震は,注意情報が出ないまま突然発生する可能性の方が高いことも,踏まえておく必要があります.「近日中に巨大地震が発生するなら」と真剣に考えて見えてきた備えを,日常に組み込んでおくことが重要です.この点は,南海トラフ地震臨時情報(注意)とも共通しています.
とりわけ,今回の地震で実際に直面した厳冬期の津波避難の難しさを踏まえれば,その備えは優先課題の一つと言えるでしょう.北海道では寒冷地という地域特性を踏まえ,真冬の津波避難に伴う低体温症のリスクについて検討が行われています.
令和4年に公表された日本海溝・千島海溝沿いの巨大津波に関する被害想定では,津波から逃れた後,屋外で長時間寒冷な環境にさらされ,屋内への二次避難が困難な状況を想定し,「低体温症要対処者数」を最大で約6万6千人と試算しています.あわせて,低体温症による災害関連死を,①津波に巻き込まれて水に濡れる場合,②津波避難後に寒冷な環境にさらされる場合,③停電による暖房の喪失に伴う場合−の3つに整理しています.
12月16日午前0時をもって,特別な注意の呼びかけ期間は終了しましたが,事前防災を継続的に前進させていく必要性は変わりません.また,この問題を,他の地域でも検討すべき論点として位置づけることが重要です.令和6年能登半島地震では,避難生活の中で低体温症が関係した災害関連死が複数確認されています.厳冬期の津波避難や避難生活における低体温症への備えを,この機会に前進させるべきではないでしょうか.
(産経新聞夕刊令和7年12月22日掲載)
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