【活動報告】南あわじ市の津波避難訓練の実地調査に行ってきました!(2日目)|2025年11月15日・16日

みなさん、こんにちは!奥村ゼミ3回生の内海、金澤、津田、西井、松川、山上です。

11月15日・16日の1泊2日で、南あわじ市阿万地区にて津波避難に関する実地調査を行いました。今回の調査には、奥村ゼミの3回生全員に加え、4回生の赤坂さん・岡林さん・齋藤さん・保田さん、そして修士の上野さん・大槻さん・久世さんの計19名が参加しました。4回生の4名と、修士の久世さんは昨年に続いての参加となります。

1日目の様子は、4回生の岡林さんと保田さんが詳しく報告してくださっていますので、まだ読んでいない方はぜひそちらをご覧ください(こちら)。この投稿では、2日目の雰囲気や学んだことを中心に、できるだけ分かりやすく紹介していきます。そして2日目はいよいよ、地域のみなさんと一緒に参加させていただいた避難訓練の当日です。ぜひ最後までご覧ください!

阿万海岸で迎えた1日の始まり

(文責:内海・西井)

2日目の朝は、阿万海岸海水浴場での朝日鑑賞からスタートしました。午前5時半に起床し、前日の疲れもどこへやら、みんな元気に準備を始めました。「急がないと朝日が出ちゃう!?」という声に急かされながら、慌てて宿舎を出発。海岸へ向かう道は冬の朝らしく空気がキリッと冷えていましたが、みんなで走るうちにその冷たさも心地よく感じられました。

海岸に着き、「間に合った〜」とひと安心したものの……そこから 30分以上も朝日が出てこない 展開に。山に太陽が隠れていたため、「このままでは見られないかも?」という不安がよぎりました。

朝食まで残り10分。「もう無理かも……」とあきらめかけたそのとき、山の稜線が少しずつ光り始めました。

海には光の通り道!?

そして――ついに朝日が顔を出しました。海面が金色に染まる瞬間は、思わず息をのむほどの美しさで、まるで景色が一気に開けたような特別な時間でした。

その後は、朝日をバックに記念写真を撮り、朝食に向かって全員でダッシュ!🏃無事に間に合いました😮‍💨宿舎に戻ってからは、オーナーさん手作りの朝食をいただきました。とてもおいしく、心までほっと温まる味でした。また、オーナーさんご夫婦の朗らかな笑顔や優しい声かけに癒やされ、1日目の夕方から2日目にかけて快適に過ごすことができました。私たちを温かく迎えてくださったペンションのご夫婦には、感謝の気持ちでいっぱいです。

こうして、2日目がいよいよ本格的にスタートします!

朝日をバックに写真撮影
オーナーさん手作りの朝食

津波避難訓練の様子

(文責:津田・松川)

ここからは、私たちが実際に参加した「津波避難訓練」のレポートです!今回強く感じたのは、災害時に最も頼りになるのは、日頃から培われてきた“地域のつながり”であるという点でした。

その背景を理解するため、まずは阿万中西の避難体制の特徴である「隣保」と「半鐘」についてご紹介します。

・隣保(りんぽ)とは

阿万中西には、住民同士の助け合いや親睦を図るための地域コミュニティの基礎単位である、12の「隣保(りんぽ)」があります。この地区では、1つの隣保がおおむね10〜20世帯で構成されています。

津波避難時には、隣保ごとにあらかじめ定められた集合場所があり、住民の皆さんはまずそこに集まって人数確認を行います。高台に向かう前にこの確認をされているのは、隣保単位で「自分たちで決めた時間の範囲内で津波避難要支援者をサポートする」という役割を担っているためで、今回の訓練でもその一連の流れに沿ったものになっていました。

今回の訓練では、参加した学生19名が 数名ずつに分かれて複数の隣保に同行 させていただき、それぞれの隣保がどのように集合し、行動されているのかを間近で見せていただきました。移動の途中で住民の方が野菜をお裾分けをする姿も見られ、地域に根付く温かい関係性がそのまま防災力につながっていることを強く実感しました。

隣保に集合し、避難所へ向かう住民

・半鐘(はんしょう)とは

半鐘は、かつて火災発生時に住民へ警戒を呼びかけるために使われていたもので、延焼火災に巻き込まれないよう注意を促すため、遠くまでよく響くようにつくられています。阿万中西地区では、近年ほとんど使われなくなっていたこの半鐘を、住民の皆さんが「津波避難の合図」として再び活用することにしたそうです。

訓練当日は、消防団の方によって半鐘が鳴らされ、高台から離れた場所でもはっきりと聞こえるほど大きく響いていました。初めてその音を聞いたとき、私たちは「何の音だろう?」と驚きましたが、住民以外の参加者でも思わず身構えるような力強い音で、音の鳴る方向へ向かえば自然と高台に向かえるという、とても合理的な仕組みだと感じました。

半鐘が鳴り始めて5分ほどで、住民の皆さんが集合場所へ集まって来られました。その後、別の隣保とも合流しながら、高台へ向かいました。

半鐘

・避難完了

今回の訓練では、約20分かけて、住民の皆さんは高台に上がる手前の広場に全員が集まっていました。しかし、実際の津波避難では、ここで避難が完了するわけではありません。

この地域が想定する津波は最大5.9mで、地震発生から約50分後に到達するとされています。手前の広場は標高が低く、津波によって浸水してしまうため、住民の皆さんはその先にある標高28mの高台上の広場を目指す必要があります。

「最大津波高が5.9メートルなら、その少し上まで行けばよいのでは?」と思うかもしれません。しかし、避難経路となるスロープや階段は幅が狭く、6mや7m付近で多くの住民が立ち止まると渋滞が発生し、結果的に大勢が危険にさらされてしまう恐れがあります。
そのため、住民全員が安全に避難できるよう、標高28mの広場まで登り切ることが重要になります。

実際に私たちも高台までのルートを歩いてみました。14m地点までは緩やかなスロープが続きますが、その先は急な階段となっており、標高が上がるにつれて一歩一歩が重く感じられました。特に高齢者・子ども・荷物を背負った状態の方々にとっては、体力的な負担が大きいのではないかと感じました。

つまり、今回の「20分」というのはあくまで手前の広場まで到達した時間であり、実際の避難完了には、さらに高台まで登るための時間が必要となるということです。

高台に上がる手前の広場に集まる住民の皆さん

・避難訓練を終えて

阿万中西の避難訓練は、地元消防団と自治会が連携されている様子や、住民の皆さんが「自分ごと」として主体的に参加されている様子が印象的でした。

自治会役員の方からは、「避難訓練を特別なものではなく、日常の延長として当たり前の存在にしていきたい」という言葉もありました。こうした姿勢こそが、災害時に迷わず行動できる力になっていくのだと、今回の参加を通じて実感しました。

消火体験を行うゼミ生
子どもと話すゼミ生

うずしおクルーズに乗って

(文責:山上・西井)

阿万中西での避難訓練を終え、福良に戻った私たちは、うずしおクルーズに乗船しました。船上からは、完成したばかりの湾口防波堤の構造や潮の流れを観察することができました。

・高さ5.9mの湾口防波堤

福良港には、全長約1.1km、高さ5.9mの湾口防波堤があります(福良港湾口防波堤の概要:こちら,兵庫県の津波防災インフラ整備計画:こちら,津波浸水想定図:こちら)。実際に間近で見ると、その迫力と規模に圧倒されました!さらに、防波堤の内側と外側で波浪の様子が大きく異なっている様子も印象的でした。

2024年11月に完成した高さ5.9mの湾口防波堤

・鳴門のうずしお
クルーズ船からは、鳴門海峡ならではの大小さまざまな渦潮を見ることができました。

鳴門海峡は、満潮と干潮が隣り合わせに同時に存在するという、世界的にも珍しい地形をもっています。この潮位の差によって速い潮流と遅い潮流がぶつかり合い、そこに回転力(=うずしお)が生まれるのだそうです。

うずしおが見られるのは、満潮と干潮の前後のわずかな時間だけという貴重な自然現象。短い時間しか現れないことを知ると、その瞬間に立ち会えたことがより特別に感じられました。

渦が巻き始める瞬間

・非常食そうめん

なんと帰港後には、南海トラフ地震が発生して船が港に戻れない状況を想定した非常食提供訓練が実施されました。予期していなかったので驚きましたが、もちろん私たちはその訓練にも参加しました。といっても、私たちは調理していただいた非常食をいただくだけなのですが。そして、南あわじ市の非常食といえば、もちろん「そうめん」です!

長期保存がきき、調理がしやすいことから南あわじ市では非常食として採用されています。みんなで美味しくいただきました。

観光客を巻き込んだこの訓練は、とても有意義な取り組みだと感じました。観光地では、地元住民だけでなく、観光で訪れた人も災害に遭う可能性があります。今回の訓練は、そのような状況を想像する機会になりました。こうした取り組みが今後も続いてほしいと思いました。

ちなみに、私たちは直近の学園祭で「淡路手延素麺」を使った屋台を出店していたこともあり、この訓練に親近感を感じていました。(笑)(学祭の様子:こちら

非常食になるそうめん

まとめ

(文責:金澤・西井)

今年度は奥村先生がインド出張で帯同していただけない中、院生・4回生の皆さんの厚いサポートのおかげで、2日間の現地調査を無事に終えることができました。本当に心強く、そして温かいサポートに支えられたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。

そして何より、大学内の研究活動だけでは得られない、“現地で五感を使って学ぶ”貴重な体験となりました。調査を進める中で新しい発見がいくつもあり、「もっと学びたい」「もっと深めたい」という気持ちが強くなりました。

この調査で出会った皆様、支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。今回の気付きや学びを、参加学生一同、今後の研究活動にしっかりつなげていきます!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

うずしおクルーズで集合写真🌀