R07.11.21:大阪商工会議所 常議委員会(主催:大阪商工会議所,場所:大阪商工会議所)「再考―国難災害との向き合い方 企業経営に新たな視点を」
<概要>
防災トランスフォーメーションの兆しと企業価値
近年、防災トランスフォーメーションとも呼ぶべき現象が、社会のさまざまな領域で芽生えつつある。個人にとっても企業にとっても、防災は「手間がかかる」「コストが増える」と受け止められがちな領域である。それでも現場の努力によって、我が国の防災レベルは、その負担感の中で到達しうる限界に近い水準まで高められてきたと言える。
ここからさらに前に進むためには、防災を別枠の負担ではなく、日常の価値に自然と組み込まれる領域として捉える視点が重要になる。「面倒で進めづらい」と多くが感じるからこそ、そこに挑む企業が、いざという時だけでなく日常の場面でも大きな存在感を示しつつある。防災をコストではなく、自社の信頼価値を高めるチャンスとして捉える企業が、確実に増えてきている。
社員と家族を守る企業の姿勢が、生み出す新しい価値
社員やその家族の安全をどう守るかという視点に踏み込むと、企業が社会に果たせる役割は一段と広がる。災害時に社員と家族が被災しないよう後押しする取り組みは、企業の前進を支える取り組みそのものになりうる。
「気をつけて」「備えよう」とスローガンだけを掲げても行動は定着しない。人間ドックが福利厚生として浸透してきたように、防災を“福利厚生として後押しする仕組み”に組み込むことで、これまでにない防災水準へと社会全体を引き上げる力になる。
安全な住環境への転居支援、家具固定サービスのチケット、利用しないともったいないと感じる仕組みなど、社員が自然と使いたくなる制度が鍵となる。これらは企業の姿勢を社員に示すだけでなく、国難級災害が発生したときにも社員が被災せず、被災社会を日常に近い形で支える企業へと成長する大きな力となる。
日本発のレジリエンスが世界を支える未来へ
こうした考え方で企業価値を磨き続けることは、国内にとどまらず、国際競争力の源泉にもなりうる。気候変動の激化や世界各地で頻発する災害は世界共通の課題であり、それに向き合うことが「面倒で進まない」のもまた世界共通である。
だからこそ、日本から、災害に強い製品・サービス・インフラを提供する企業が多数生まれれば、それは各企業の成長にとどまらず、日本全体の価値を押し上げる大きな力になる。防災やレジリエンスに関する知見は海外の同業他社に対して確かな優位性をもたらし、国際社会から選ばれる日本企業の姿を後押しするだろう。
未来への不安を希望に変え、世界に向けた新たな成長を切り拓く。そうした道筋を描けるのは、「防災を価値」として育ててきた日本企業だからこそ、なのではないだろうか。
