福島の地を訪れて感じた、数字の奥にある物語

こんにちは!奥村ゼミ3回生の保田香音です.

先日,「東日本大震災・原子力災害 第3回学術研究集会」にて,研究成果を発表させていただきました.私にとっては,人生で初めての学外での研究発表であり,初めて訪れた東北地方でもありました.

現在,災害関連死の実態を把握することを目的とした研究を行っています.研究のきっかけは,福島県楢葉町からいただいた災害関連死の申立書でした.

申立書の一文一文をパソコンで打ち込んでいると,ご遺族の悲痛な思いや,避難を余儀なくされた劣悪な環境,地元を離れて暮らす悲しみがひしひしと伝わってきました.大切なご家族を失ったご遺族が,この申請書に込めた思いと向き合う中で,私は災害関連死の研究に取り組む決意を固めました.

学会では,さまざまな先生方の発表を拝聴し,一人ひとりが異なる分野から被害を減らそうと尽力されていること,そして未解決の課題に真摯に向き合う姿に圧倒されました.災害という複雑なテーマを多角的に捉える重要性を改めて実感するとともに,自分自身の研究への熱意も一層高まりました.

発表の翌日は,福島県浜通りを訪れました.震災遺構である請戸小学校では,ありえない方向に曲がった蛇口が特に印象的で,津波の脅威を生々しく物語っていました.

また,東日本大震災・原子力災害伝承館では,当時の小学生が書いた原子力発電所に関する作文を目にし,震災前の原発への捉え方や空気感を感じ取ることができました.現地での体験を通じて,申立書に記された言葉がより立体的に,そして具体的な情景として浮かび上がりました.

私は現在,死亡届出数をもとに研究を進めています.しかし,死亡届として表されるデータ上の『1』として片付けてしまっては見えてこない,その人の暮らしがあります.地元を愛し,美しい海や田畑,豊かな自然に囲まれて生きていた,その人の人生があったことを再認識しました.死亡届という数字の背後にある重みを,現地で肌で感じたことで,これからの研究に対する思いがより深まりました.

また,これまで大学で学んできた東日本大震災や各地の災害,災害関連死について,まだまだ知らないことがたくさんあることも痛感しました.現地を訪れなければ気づけないことが多くあり,足を運ぶことの大切さを改めて認識しました.これからも,その地の空気や暮らしを肌で感じながら,より多くの知見を得るために,国内外を問わずさまざまな土地を巡っていきたいと思います.

津波で大きく変形した蛇口

関連記事:
「東日本大震災・原子力災害 第三回学術研究集会」に参加しました