赤尾勝己ゼミ

赤尾 勝己 教授  Katsumi Akao

教員紹介

1995年4月に、関東地方の大学からこの関西大学に移籍してきました。赤尾ゼミは教育文化専修でもっとも歴史が古く、今年創立24年目を迎え、現在の3回生は第23期生です。私の専門分野は「生涯学習」です。生涯にわたる学習について、教育学、社会学、心理学等による学際研究を志向しています。学習は教育学だけでは十分に捉えきれないからです。主な担当授業は「生涯学習概論(一)」「生涯学習論」「社会教育計画(二)」「教育学概論」です。そこでは、自ら執筆した『新しい生涯学習概論:後期近代社会に生きる私たちの学び』(ミネルヴァ書房、2012年)、『生涯学習理論を学ぶ人のために』(世界思想社、2004年)、『生涯学習社会の可能性:市民参加による現代的課題の講座づくり』(ミネルヴァ書房、2009年)を、教科書または参考書として使っています。現在は、学習という行為を学ぶ人の側から考察する「学習社会学」という新しい学問を構想しています。2017年3月には、教育文化専修の先生方と一緒に『学習社会学の構想』(編著、晃洋書房)を刊行しました。赤尾ゼミに集う皆さんの若い発想から、私も学びたいと思います。

学びの3本柱

2019年度の赤尾ゼミは、次のように大きく3本の柱から構成されます。

まず4月から5月にかけて、グローバルな観点から教育を含むより大きな社会のあり方を展望する視野を獲得するために、3~4回生合同で次の教科書を読みます。3~4回生を大きく3つのグループに分けて、目次順に発表していきます。夏休みには、レポートを書いていただきます。
デイヴィッド・ラバリー著、倉石一郎、小林美文訳『教育依存社会アメリカ―学校改革の大義と現実―』岩波書店、2018年。
目次は次の通りです。
第1章 市民から消費者へ    第2章 アメリカの学校制度の創設
第3章 進歩主義運動による学校制度改革の試み
第4章 改革に対する組織的抵抗 第5章 教室レベルでの改革への抵抗
第6章 社会問題の解決の失敗  第7章 学校での学習の限界
第8章 学校シンドロームと共に生きる
大学生のうちに、アメリカの教育について、こうした本格的な教育社会学的分析に触れておくことは、皆さんが将来どんな進路に進むにしても意義のあることだと思います。

赤尾ゼミ2本目の柱は、インターゼミ合宿に向けた共同研究です。6月中旬から3回生の問題意識を出し合い、それらを一つのテーマに絞り込んでいきます。研究テーマと目次を決め、先行研究を読み、現場へ行って関係者への聞き取り調査やアンケート調査などのフィールドワークを行い、それらを冊子論文とパワーポイント資料にまとめます。過去5回の赤尾ゼミのインターゼミ合宿での発表テーマは次の通りです。
2014年度「生涯学習センターの講座をより魅力的にするために~大学生からの講座の提案~」
2015年度「総合型地域スポーツクラブについて~誰もがいつでもどこでもスポーツを通して楽しめるために~」
2016年度「部活動の外部委託について~大阪市立中学校でのフィールドワークを通して~」
2017年度「外国にルーツを持つ子どもへの日本語教育方法」
2018年度「「公立小学校の英語教育改革~理想の英語教育を考える~」
この共同研究の過程で、皆さんは、ゼミ長・副ゼミ長を中心にしたチームワークを形成し、互いに切磋琢磨と協力をしながら、「学問をする」ことの片鱗に触れることになります。

赤尾ゼミ3本目の柱は、インターゼミ合宿が終わる12月から始まる3回生一人ひとりの問題意識に基づいた個人研究発表です。インターゼミ合宿では、ゼミ員全員で1つの研究テーマに基づくプレゼンテーション資料を作り上げましたが、今度は研究発表を一人ずつ行い、それをゼミ員同士で聴きあい意見を出して磨き合うことになります。これは卒業論文に向けたキックオフの位置づけです。この段階での研究テーマはまだいくらでも変更が効きますのでご安心ください。なお、過去3年間に卒業した学生の卒業論文の主なテーマは下記の通りです。

  • 「荒れた中学校とその再生について―学校を「よく」するためにできること―」
  • 「部活動からみた教員の多忙化・長時間労働改善の研究―ノークラブデーは効果的なのか」
  • 「大阪府の中学校給食における問題点と栄養教諭の重要性―堺市立中学校でのインタビューをふまえて―」
  • 「すべての病気の子どもの教育を保障するために」
  • 「学生ボランティア活動の意義と在り方―<贈与>のパラドックスを回避するために―」
  • 「教育改革に伴う後期中等教育における歴史教育の在り方―「なぜ」の歴史教育を求めて」
  • 「生涯学習の学習者と指導者を結びつけるために―生涯学習指導者人材バンクを通して―」
  • 「これからの学校に求められる「役割」―生涯学習社会へ向けての学社融合の可能性―」
  • 「文学的文章の指導に関する研究―言語活動の充実を目指して―」
  • 「待機児童問題―今、保育に何が求められているのか―」
  • 「ジェンダーの観点から見た宮崎作品―男女平等教育での活用可能性―
  • 「吹田市と関西大学が共に目指すまちづくりとは―連携協働事業における実態と課題―」