多摩美術大学美術館での展示「オトグラフ-井浦 崇准教授、大島幸代非常勤講師-」2018.5.19-6.17

作品“tamakagiru”は万葉集で用いられた枕詞「玉響(たまかぎる」とミュー粒子をモチーフにしています。「玉響」は奈良時代には“宝玉などが淡く光を放つ”という意味で視覚的イメージを表していたようですが、のちに訓みが「たまゆら」へと変化して“宝玉が触れ合うようなかすかな響き”などの聴覚的なニュアンスを含むようになりました。さらに転じて、現代では“一瞬”“かすか”といった意味の副詞として残っています。一方、宙(そら)から飛来して一瞬で物質を通過するミュー粒子は、肉眼で見ることはできませんが、光に変えて解析することで、ものの内部を透視して従来までの見え方を変えてゆきます。その素粒子の輝きと古代の言葉の記憶を作品世界で重ねたとき、自然の中にかすかなものの存在を認め、捉えようとする人間の眼差しと探求心が浮かび上がるのです。text by Sachiyo OSHIMA

会場では、ミュオンをモチーフとした静かなかつ宇宙の壮大さを感じさせるような音響が流れています。