10月25日(土)、関西大学千里山キャンパス第一学舎E棟 503教室で開催される第46回 日本エズラ・パウンド協会大会で、「エズラ・パウンド遠望――〈具体〉と菅野聖子を通して」と題した特別講演(15:55~16:55)を行います。会員でなくとも聴講できます。以下、概要です。
日本におけるパウンドのイメージは、『パウンド詩集』(1956)のカバーデザインに端的に示されるように、前衛的である。北園克衛や西脇順三郎をはじめとするパウンドの友人たちは、俳句や能楽を西洋に紹介した功績よりも、パウンドの前衛性を評価していた。北園たちの流れを汲むグループのひとつに、「具体詩(Concrete Poetry)」を活動の主軸に置いた「芸術研究協会(the Association for Study of Arts 略称ASA)」がある。この協会は1964年、パウンドと交流のあった藤富保男と新國誠一が創立したもので、会員には画家であり詩人である菅野聖子(1933-88)がいた。菅野は1964年から抽象芸術団体の「具体美術協会」(「具体」、1954年設立)に参加、コラージュによる抽象絵画で耳目を集めたのち、1965年からASAにも参加した。具体詩の影響を受け、菅野の詩は言葉の形象や音を重視する作品へと変化し、その絵画もまた、線の集積で構成された幾何学的な画面へと変化した。菅野は詩と絵画を創作の両輪と考えており、それを踏まえるなら、彼女の画業からその詩的世界を、さらにASAを経由してパウンドの詩的世界を遠望することが可能になるのではないだろうか。本発表では、菅野の絵画と芸術活動を概観し、日本における具体詩、「具体」美術、ひいてはパウンドの詩とその前衛性について再考する契機としたい。