森本慶太『スイス観光業の近現代―大衆化をめぐる葛藤』(関西大学出版部、2023年2月)

本書は森本の博士論文などこれまでの研究をまとめたもので、20世紀前半のスイス観光業の歴史的意義を明らかにしようと試みました。

1930年代以降のスイスでは、第一次世界大戦前のように外国人富裕層の旅行様式を前提とする、高水準の観光の維持が限界に達していました。観光業界は大衆化をはじめとする社会的・経済的変動と向き合い、新たな方向性を打ち出す必要に迫られていました。1930年代から40年代前半にかけて、スイスの観光業界は、観光の大衆化と客層の差別化をめぐるせめぎあいの渦中にいました。本書では、第二次世界大戦前から戦後にかけての連続性を重視し、当時のスイス観光業の模索の中から、戦後の西欧諸国で観光の大衆化を促進することになる振興策が生まれてくると主張しました。

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