人工臓器をつくる

DNAとPEGだけからできた「からだにやさしい」私たちのDNA四重鎖ゲルの使い道としてもうひとつ考えられるのが、再生医療における細胞を培養するための基材です。一般に用いられている培地は必ず生理条件のNaイオンを含んでいるため、これらは良好にDNA四重鎖ゲルを固めることができます。そこで、細胞とゲルの原料の溶液を交互に吐出して、DNA四重鎖ゲルで包み込みながら細胞を三次元に積層していく「細胞3Dプリンティング」が実現できれば、天然の複雑な立体構造を再現した人工臓器をつくることができるかもしれません。

 実際にマウスの線維芽細胞L929をDNA四重鎖ゲルの上に播いてみたところ、DNA四重鎖ゲルの新たな課題が見えてきました(Polymers 2019, 11, 1607)。どうやらDNA四重鎖ゲルは細胞に毒性を示さないものの、細胞はDNA四重鎖ゲルに接着することができず、何日も丸まったままで分裂もできないようなのです。調査の結果、これはPEGを主成分とするヒドロゲルには共通の性質であることがわかってきました。今後、細胞外マトリクスの主成分であるコラーゲンを添加するなど、「細胞が接着できる」DNA四重鎖ゲルの開発に取り組んでいきます。

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