関西大学システム理工学部機械工学科機械設計研究室
関西大学機械設計研究室では,「ナノトライボロジー」「MEMS」をキーワードに研究活動を行っています.
情報機器の一つであるハードディスク装置のトライボロジー,DLCなどカーボン膜のトライボロジー,トライボケミカル反応を伴う添加剤などのトライボロジー,マイクロアクチュエータのMEMSなどを中心に分子レベルからの摩擦・摩耗現象の解明とその応用に取り組んでいます.
次世代ハードディスク装置として熱アシスト記録が検討されています.熱アシスト記録はレーザで磁気ディスクを高温加熱するため,DLC保護膜や潤滑膜の熱安定性を確保することが重要です.そこで,レーザ加熱によるDLC保護膜の構造変化やPFPE潤滑膜の分解や摩擦力・凝着力の変化を明らかにする研究や蒸気潤滑方式の開発を行っています.DLCの構造変化にはラマンスペクトル測定,潤滑膜の分解などにはTOF-SIMSという最新鋭の分析装置を用い研究に取り組んでいます.
磁気ディスクのPFPE潤滑膜は一般的に紫外線を照射するプロセスによってDLC表面との化学吸着割合が増加します.これは,紫外線によってDLC表面から放出される光電子を潤滑剤分子が捕獲し,末端が分解して化学吸着すると考えられます.そこで,低分子PFPE潤滑剤ガスをチャンバーに導入して紫外線による光電子を照射することで潤滑剤分子の一部分のみを分解させ,DLC表面に完全な化学吸着した潤滑膜の形成に成功しました.これを光電子アシストCVD法と呼んでいます.ほかにもDLC膜と潤滑添加剤とのトライボケミカル反応についても研究を進めています.
摩擦による静電気は従来色々な問題を引き起こすものと考えられていました.しかし,摩擦による帯電をうまく利用すると発電やセンサへの利用が可能となります.我々は,柔らかなゴムの間に電極と帯電フィルムを挟むことにより,圧力変動で発電可能な接触型摩擦発電機を開発しました.