森部豊『ソグド人の東方活動と東ユーラシア世界の歴史的展開』(関西大学出版部、2010年3月)

ソグド人は、いわゆる「シルクロード」で交易活動に従事した商人として有名ですが、中にモンゴリアにあった突厥の影響を受け、騎馬遊牧民化した人もいました。彼らは、突厥が唐に服属した後、ソグド人同士の集団を保ったまま、唐朝の領域内へ移住し、やがて中国の歴史に深くかかわっていくことになります。この騎馬遊牧民化したソグド人を、私は「ソグド系突厥」と呼び、かれらが唐とその後の五代十国時代で果たした政治的・軍事的役割を、墓誌をはじめとする石刻史料を分析することにより、浮かびあがらせました。これまで、唐の半ばにおきた安禄山の反乱や、その後継勢力である河北の軍閥、そして唐が滅亡した後の五代王朝の歴史は、「中国史」という枠で語られてきました。しかし、これらの歴史事象の背景には、常にソグド系突厥が存在しており、むしろ、ソグド系突厥が安禄山の反乱から五代王朝の興亡に深くかかわっていることがわかってきました。本書は、このような視点で唐から五代までの政治史を論じたものです。

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