研究テーマ

情報検索 Information Retrieval

推薦システムの多様化

推薦システムは、ユーザーが満足するアイテムを見つける手助けをするために、Webサービスで重要な役割を果たしています。しかし、精度だけに焦点を当てた推薦システムを使用すると、類似したアイテムが多く推薦され、新しい発見のチャンスが失われる問題があります。私たちは、この問題を解決するために、多様性を考慮した推薦システムの研究を行っています。

本研究では、グラフニューラルネットワーク(GNN)を基盤として、音楽や商品の推薦におけるカテゴリの多様化に取り組んでいます。ユーザーやアイテムをノード、ユーザーとアイテムの相互作用(例:視聴、クリック、いいね)をエッジとするグラフを作成し、ユーザーが関連するアイテムのカテゴリが均等になるようにエッジを選択して、サブグラフを構築します。このサブグラフをGNNに入力することで、ユーザーが受けるカテゴリの偏りを抑えることができます。さらに、学習サンプルの中でユーザーとの相互作用が少ないカテゴリのアイテムを積極的に学習に取り入れることで、精度を大幅に犠牲にすることなく、多様な推薦を実現しています。

相互作用グラフとカテゴリを考慮したエッジ選択

杉山 拓都:グラフニューラルネットワークに基づく多様性を考慮した推薦システム,関西大学卒業論文 (2023年2月)

クロスドメイン推薦

クロスドメイン推薦は、複数の異なる領域やカテゴリ間で情報を共有し、一つの領域でのユーザーの好みや行動から別の領域での推薦を行う技術のことを指します。例えば、あるユーザーが映画の領域で好む傾向や行動をもとに、音楽の推薦を行うような場面で活用されます。このような技術は、ユーザーの様々な興味や嗜好を広い範囲で理解し、より適切な推薦を行うことができるため、近年注目されています。

既存のクロスドメイン推薦システムは、複数のドメインにわたるユーザーの嗜好が均一であると仮定し、ユーザーとアイテムの関連性の類似性を捉えて推薦を行います。しかし、ユーザーが異なるドメイン間で持つ興味は多様で、これを適切に捉えるのは難しいという課題がありました。

これらの課題を解決するために、当研究室では敵対的学習の考え方を取り入れた新しいクロスドメイン推薦モデルを研究しています。このモデルは、ユーザーのグローバルな嗜好とドメイン固有の嗜好を組み合わせて、より満足度の高いクロスドメイン推薦を提供します。

映像リランキング

映像リランキングとは、映像コンテンツを対象とした検索結果の再評価や並べ替えを行う技術です。インターネット上の動画やテレビ番組など、多様な映像情報があふれる現代社会において、ユーザーの関心やニーズに適したコンテンツを効率的に提供するために重要な役割を果たします。

映像リランキングのプロセスは、主に以下の3つのステップに分かれます。

  1. 特徴抽出:映像コンテンツから、色彩、テクスチャ、シーンの構成、オブジェクト、人物、音声などの特徴を抽出します。
  2. 特徴表現:抽出された特徴を、効率的な検索や比較が可能な形式(ベクトルやヒストグラムなど)で表現します。
  3. 評価・並べ替え:特徴表現をもとに、ユーザーの関心やニーズに適した映像コンテンツを評価し、検索結果を並べ替えます。

映像リランキングは、機械学習やディープラーニング技術を活用して、特徴抽出や評価の精度を向上させることが求められています。また、ユーザーの過去の閲覧行動や評価履歴、コンテキスト情報を考慮した個別化されたリランキングも注目されており、映像コンテンツの消費体験をより充実させるための研究が盛んに行われています。

映像リランキングの概要
  • S. Yoshida, M. Muneyasu, T. Ogawa, and M. Haseyama : Heterogenerous-Graph-Based Video Search Reranking Using Topic Relevance, IEICE Trans. Fundamentals, vol. E103-A, no.12, pp. 1529-1540, Dec. 2020 DOI: 10.1587/transfun.2020SMP0023
  • T. Fujii, S. Yoshida and M. Muneyasu : Video Search Reranking with Relevance Feedback Using Visual and Textual Similarities, IEICE Trans. Fundamentals, vol. E102-A, no.12, pp. 1900-1909, Dec. 2019 DOI: 10.1587/transfun.E102.A.1900
  • S. Yoshida, T. Ogawa, M. Haseyama and M. Muneyasu : Graph-Based Video Search Reranking with Local and Global Consistency Analysis, IEICE Trans. Inf. & Syst., vol. E101-D, no.5, pp. 1430-1440, May 2018 DOI: 10.1587/transinf.2017EDP7277