当研究室の学生がIEEE GCCE 2025 Oral Presenation Awardを受賞しました

博士前期課程2年の阿部知希さんが、IEEE GCCE 2025 Oral Presenation Awardを受賞しました。

発表題目:Learning to Detect Fake News Early: A Multi-Task Approach with Generalized Distillation and Dynamic Graph

概要:

近年、SNS上では真偽の定かでない情報、いわゆるフェイクニュースが急速に拡散し、政治や社会、経済に深刻な影響を及ぼす事例が増えています。こうした問題に対応するため、多くの研究がAIを用いたフェイクニュース検出に取り組んでいます。しかし、従来の手法の多くは情報の拡散がある程度進んでからでなければ正確に判定できず、被害を未然に防ぐことが難しいという課題がありました。

本研究では、この早期検出の問題に焦点を当て、ニュースが広まり始めた初期段階、特に投稿から最初の一時間ほどの限られた情報からでも高精度に判定できるAIモデルを開発しました。提案手法では、SNS上で誰が誰に情報を拡散したかという関係をグラフ構造として表現し、その変化を時間的に捉えるグラフニューラルネットワーク(GNN)を用いています。さらに、十分な拡散情報を利用して学習した教師モデルから、初期段階の情報しか利用できない生徒モデルへ知識を伝える知識蒸留という学習法を導入しました。加えて、ニュースの将来的な拡散の広がり方を予測する補助的な学習を同時に行うことで、限られた情報の中でもより豊かな特徴を捉えられるようにしています。

政治やゴシップ関連のニュースを集めたFakeNewsNetデータセットや、事件・災害などの情報を含むPHEMEデータセットを用いた実験の結果、提案手法は従来法を上回る精度でフェイクニュースを検出できることが確認されました。特に、情報が広まり始めてからわずか一時間以内の段階でも高い判定性能を維持できることが示され、被害の拡大を防ぐための実用的な可能性が示されました。