『日英翻訳の技術』がアマゾンで発売になったようです(今品切れのようですが)。こちらに目次を挙げ、すこしづつ説明していきます。
第1章 翻訳者になるために
第1章では、翻訳者になるために必要な5つの能力について述べています。
英文解釈の力
日本語の表現力
専門分野の知識
調査能力
翻訳の技術
です。そしてその「翻訳の技術」が本書で習得できる能力です。
第2章 優れた翻訳とは
大上段に構えるわけではなく、生徒の皆さんに日常生活の中から翻訳を見つけて来てもらいます。電車、トイレ、製品、テーマパークなど、いろんなところに翻訳はあります。そして、
1) 日英か英日か。そう考える理由は?
2) 良い訳か悪い訳か。そう考える理由は?
3) 日本語と英語の違いは?
を考えてもらいます。これから翻訳する指針になるでしょう。
第3章 代名詞
さて、第3章から無生物主語、名詞句、順行訳まで、コアな翻訳のテクニックのストレッチにはいります。第3章は代名詞。代名詞は取りましょう、使うときにはあたし、君、あいつ、息子、あの子など工夫しましょう、という非常にシンプルなテクニックです。
第4章 数量詞
以下のようなテクニックです。
Some Chinese like sushi.
×何人かの中国人は寿司が好きだ
○寿司が好きな中国人もいる
理由
1 「何人かの中国人」は日本語として不自然。
2 意味的理由。「何人か」というと2〜8人くらいの印象だが、15億人を超える中のsomeは一億+でもおかしくない。
第5章 比較級と最上級
比較級の概念が英日で違います。「より大きい」「より悪い」というのは発明された翻訳調なので日本語としては不自然です。
奴より上手い
以前比べて増えた
理解が深まった
など、
- 比較の対象を明示する。
- 動詞で以前との比較を変化とする。
という技術を使います。
第6章 無生物主語 I
本書の中核をなすテクニックになります。池上嘉彦の「する」と「なる」の概念を翻訳に当てはめます。
The typhoon killed 13 people.
×台風が13人を殺した
○台風で13人が死んだ(亡くなった)
抽象概念や自然現象など、人間や動物以外の主語が動作をする=無生物主語です。
第7章 無生物主語 I I
第6章に続き無生物主語です。この章では、allow, preventなど、無生物主語を構成することが多い動詞のリストを、意味カテゴリーに沿って紹介します。
第8章 名詞句
大事な無生物主語I IIと大事な順行訳の間に大事な名詞句がありました。
これも池上嘉彦の
英語=名詞的
日本語=動詞的
という類型に依拠したテクニックです。
The introduction of the new
thechnology increased the output.
の訳として、無生物主語を使って「新技術の導入で生産高が増えた」はいいけど、さらに進んで「新技術を導入したので生産高が増えた」として、名詞句を動詞句的に訳してやると、日本語らしいですよ、というテクニックです。
第9章 順行訳
前から切って訳す、という翻訳の定番、順行訳。
ここには、日本語にしてしまうと出来事の順とねじれてしまう、というケースがあります。
The rocket will be traveling for 6 months before it reaches Mars.
ロケットは火星に着く前に6か月間飛行する。
だと何かおかしい。
第10章 話法
I asked her if she could come.
(?)私は彼女に来てくれるか尋ねた。
「来てくれる?」とその子に聞いた。
日本語が臨場感に富んだ表現を好むことは池上嘉彦や片岡邦好も示しています。
間接話法はできるだけ直接話法的に訳します。
第11章 レトリック
レトリックもイディオムも、気をつけるのは、無理しすぎないで平易な言葉(リテラル)で訳すこと。ぴったりのレトリックやことわざ、イディオムがあればそれを使えばいいですが、ない場合はリテラルで訳します。課題は、感情をジェットコースターに喩えた長文。
第12章 イディオム
イディオムは単語のようなものです。up for grab, hit below the belt, a green eye など、スポーツ、ことわざなど、いろいろな特定の意味があります。
なので、部分の単語がわかるからといって全体の意味を推測するのは危険です。少しでもわからなければ、必ず調べてください。
第13章 肯定表現と否定表現
英語は肯定表現、日本語は否定表現になることは多いです。今なら、Stay home.に対して、「家にいて」より、「家から出ないで」の方が日本語らしいのではないでしょうか。
このように否定表現にできる英語表現をたくさん挙げます。
第14章 「は」「が」構文
これまで英語の構文的特徴を捉えて、そこから日本語訳を工夫してきました。
本章では日本語に特徴的な構文を捉え、逆転の発想をします。
日本語の「は」「が」構文を使って次のような英文を訳します。
Sam has two girls.
Eri’s English is good.
I am a slow writer.
第15章 まとめ 翻訳の深さ
翻訳は技術だけでなく、ひらめきが必要だと言う話です。しかしそのためには沢山の翻訳を経て様々な技術を身に付けることによってそのひらめきが出てくるようになるんですね。
皆さんがご活躍になることをお祈りいたします。