台湾社会学会で発表しました

日本社会学会と台湾社会学会の交流企画に声をかけていただき、2024年11月23日から24日に台中・中山医科大学で行われた台湾社会学会年会で、香港・上海に移住した日本人の経験とジェンダーに関して発表させていただきました。

発表では、日本のジェンダー関係と「アジア」への企業活動の拡大が、「就職ブーム」とも呼ばれた女性の自発的な海外移住を促進したことを中心に話をしました。日本の特に企業社会では、ジェンダーに基づく人事管理が長く続いており、1985年の男女雇用機会均等法がつくられたものの、管理職への昇進が可能なコースには女性がごく少数しか採用されないなど、ジェンダー差が維持されました。1990年代には、中国を中心に「アジア」地域に生産や市場を拡大する企業が増え、日本の本社から派遣される「駐在員」の大半を男性が占める中、自分で日本を離れて海外に行き、現地法人に直接雇用される「現地採用」には女性が多く見られました。香港や中国の出入国管理制度において、日系企業で事務や営業を担う社員は正規の就労ビザを取得できることが多く、主に日本人居住者や日本企業を顧客とする業務に多くの現地採用日本人が雇用されました。こうした状況を考えると、当時週刊誌や新聞が「香港就職ブーム」として、女性の海外移住が流行した、というような描き方をしたことは、誤っているわけではないけれども、ミスリーディングであり、こうした現地採用の日本人が、海外日系企業社会に果たした役割を無視すべきではないのではないかと結論づけました。

台中を訪れたのははじめてですが、高層ビルが並ぶ地域もあるものの、鉄道駅の周りなどは、古い建物がよく保存され、歩いていて楽しい町でした。また、ちょうど楊双子著『台湾漫遊鉄道のふたり』を読んでいる最中だったため、小説内に書かれたかつての台中にも思いをはせることができました。有名な台中第二市場で魯肉飯を食べたり、かつての台中刑務所の建物を利用した国家漫画博物館(これはまだ完成していないのかも?)を訪れたりもしました。
今回の台湾訪問中は、ちょうど野球の国際大会であるプレミア12が開催中で、学会参加時にも、台湾の研究者たちが「今日は野球を見なくちゃ!」とウキウキしていて、意外に感じたのですが、帰国前に台北で一泊したその日曜日がちょうど日本と台湾の決勝戦、結果はご存じの通り台湾の快勝で、国際大会での初優勝であったことも合って、大変な盛り上がりでした。もともと古い友人に会う約束をしていたのですが、彼女から「野球が見られる店で会いましょう」と申し出があり、台湾の人たちが優勝を喜び合う場に居合わせたのは、なかなか面白い経験でした。