当研究室に興味のある学生さんへ

理論・計算化学研究室は2023年度4月よりスタートした新しい研究室です。一緒に研究室を作り上げてくれる人を募集しています。ホームページや研究内容を読んでも、具体的な研究の進め方などイメージが付きにくいかと思います。プログラミングはやったことがなく出来るか心配。理論は難しそうなので私には無理だ。このような印象を持っているのではないでしょうか?しかし、研究は難しいことの連続です。そもそも研究とは、世界で誰もチャレンジしたことのないことへ挑む冒険的・想像的な営みです。出来るかどうか不安なんて考えは瑣末なことです。重要なことは新しい事を知りたい!という気持ちです。それさえあれば、一歩一歩着実に力をつけて克服できます。僕自身も応用化学の出身で、学部時代にプログラミングは習いませんでした。むしろコンピュータ自体に疎かったです。研究室に入ってからコツコツ力をつけて、今や世界トップクラスのスーパーコンピュータ「富岳」も使えるようになり、面白い研究に挑戦できるようになりました。ぜひ皆さんも研究内容に興味を持たれたら研究室に遊びに来てください。

研究室の特徴

理論・計算化学って何するの?

研究アプローチは大きく分けて二つに分類できます。 一つは、(利用できそうな)新たな物質・現象を作り出す研究です。有機化学や材料化学の研究科これに当たります。 もう一つが、ある化学現象が「なぜ・どのように起こるのか?」を解明する研究です。 このような研究を物性研究と呼び、  理論・計算化学研究室は分子動力学(MD)計算を用いて物性研究を行なっています。
 MD計算はニュートンの運動方程式を全ての原子で解くことにより、原子一つ一つの軌跡を追跡することができる手法です。右の動画は界面活性剤の1種であるC12E8の会合の様子を見たものです。動画では表示はしていませんが、実際は水分子も含めて計算しています。界面活性剤は水中で会合しミセルと呼ばれる凝集体を形成します。動画のようにMD計算を用いることで、分子会合の様子が見て取れます。

C12E8会合のMDシミュレーション。水は非表示。

研究内容

 対象とする物質はウィルスなどの生体系から、高分子などの材料系と幅広く取り扱っています。また、当研究室ではスーパーコンピュータ「富岳」をはじめとしたスーパーコンピュータを使用して計算を進めています。計算化学のスペシャリストとして既存のソフトウェアのユーザーではありません。既に存在するプログラムのみではオリジナルな研究はできません。そのため、MD計算ソフトや解析プログラムも研究室内で作成して研究を遂行しています。
 計算化学は社会的にも注目されており、欠かすことができない研究手法となりました。計算化学的手法を用いて様々なプロジェクトへの参画や、様々な大学・企業と共同研究を行っています。これらの研究に従事している学生は、他大学の研究者や企業研究者とディスカッションするという貴重な経験をしています。

研究室での学びや成長について

当研究室では研究活動を通して物理・数学・化学・ITの知識が取得できます。これまでの学習は試験で点を取るということを目的をメインに勉強をしてきたことでしょう。多くの人が物理や数学に対して面白みを感じず挫折し、正直なところ何の役に立つが分からないと思ったことでしょう。またこのような質問をぶつけたところで、古い例や曖昧な回答をされたかと思います。このような体験をしていては興味が持てなくても当然です。
 研究室では研究活動を通して、右に示してる物理・数学・化学・ITを学習します。どのような場面でこれらの学問が利用されているのかを実感として学ぶことできます。実感を持って得た知識は必ず定着します。学ぶことが多くて大変ですが、それが研究です。現段階でこれらの科目が苦手、もしくは学習したことがない方も心配いりません。一歩一歩段階的に学習し、確実にスキルを身につけます。
 研究は世界で誰もチャレンジしたことのないことへ挑む冒険的・想像的な営みです。理科の実験のような決まった作業を行うのとは異なります。周辺知識を勉強しながら、試行錯誤的に自分で実験してかなければならず、大変な作業です。このような経験は将来出会う困難を解決する力となります。研究活動を通して一緒に成長していきましょう!

  • 力学
  • 熱力学
  • 統計力学
  • 物理数学
  • 研究テーマに関連する専門知識(例: 高分子、ウィルス)
  • プログラミング(C言語)
  • Linux

※コンピュータのスキルは基本情報技術者試験(国家試験)程度の力が身につきます。

モデル学生の1週間のスケジュール

研究室のオフィスアワーは9:00-17:30です。月曜日と水曜日に短い打ち合わせをします。月曜日は1週間の研究予定を提案してもらいます。水曜日は進捗状況を踏まえて研究予定のリスケジュールの是非を提案してもらいます。金曜日に1週間の研究成果を報告してもらいます。また、1日の終わりにその日を振り替えてもらい報告してもらいます。
※状況によってこのスケジュールは変わることがあります。

求める学生さん像

研究を真摯に主体的に楽しみたい方を求めます。私は、研究室の学生と教員の関係は共同研究者であると考えています。一方的に私が教えて指示するという関係性は築いておりません。もちろん私の方が経験や知識は豊富ですから多くの面でアドバイスはいたします。ですが、研究は冒険的・創造的営みであるため、私の(経験に基づく)予想とは異なる研究結果に出会うことばかりです。そのような研究結果に最初に出会うのは私ではなく、実際に遂行している研究者(君たち)です。君たち研究者一人一人が考えながら研究を遂行していくことが非常に重要となってきます。

先輩たちの就職先

計算化学の就職先は主に化学メーカーになります。計算化学という性質上、IT技術も取得しますのでIT関連に就職した先輩もいます。本研究室からはまだ卒業生が出ておりませんので、前任校で所属していた研究室の学生さんの就職先の一部を例として挙げておきます。

  • 東亞合成
  • 日東電工
  • 東レ
  • ブラザー印刷
  • 小野薬品
  • 中部電力
  • 楽天