THEME

研究テーマ

ヒューマンモデルを追い求め、より人を豊かにするロボットを創る

総合情報学部

ヒューマンロボットインタラクション研究室

瀬島 吉裕 准教授

人間はリアルな心を求めており、言葉があるから距離が離れていても心が通じ合えます。しかし、ゴリラは言葉を持ちませんが、瞳を覗き込む行動によってコミュニケーションを図ります。本来、人間も動物ですから、同じ能力が備わっているはずです。
そこで瀬島准教授が考えたのは、「瞳の動きや五感の働きを明確にすることで、より親密な関係を築けるのではないか?」ということです。瀬島准教授はヒューマンモデルを追求し、本当の意味で人類を豊かにするロボットの創造に挑戦しています。


ロボット開発で見えてきた研究者とは?

ロボット研究の中でも「瞳の動きや、五感の働き」に注目し、他の研究者とは異なる視点からロボットを見ている瀬島准教授。
このユニークな視点はどこから来ているのでしょうか。

瀬島准教授は、高校時代に行った手術で、足の中が見られる内視鏡を見た時に、すごく興奮したと語ります。「自分なのに自分じゃない」、その時に見た自分の身体が、自分が今いる世界とは違う世界にいるように感じたことがきっかけで、内視鏡などの機械に興味を持ち、モノをつくりたいと考えました。
また、お医者さんは1日に数人しか救えない。けれど、モノをつくってしまえば100万人助けることもできるとも思いました。

大学時代に、自立型自走ビーチフラッグロボットを作った瀬島准教授は、「動くものであれば、人間は何かしらの興味を持って惹きつけられる」と感じたそうです。

その後は、「研究者になりたい!」というよりは、気づけば自然と研究者になっていました。当初は、細かく指導されることもあって、好きじゃないなと思うこともありましたが、研究を進めるうちに自分の中で仮説が出てきたのです。レゴブロックに近い感覚で、どう組み立てて自分のしたいことを作り上げるのか。「自分だったらこんなお城を作りたいな」という感覚で今日までやってきました。

瀬島准教授は、「研究者とは考えて行動すること」と言います。つまり、一人ひとりが何らかの研究者なのです。
「料理の塩味が足りなかったから、次はこんな調味料を入れよう」といったように、料理のレシピを考えるのも立派な研究者です。失敗や成功を繰り返しながら人は生きていますが、そうした過程が全て「研究」だと考えています。


モノづくりによって自分というシステムの正体を知る

瀬島准教授は、システム開発を行っています。システムとは「何かを何かの機能に置き換える」ことです。例えば、ある人間の思考をモノに置き換える。その結果が、同じようになったのであれば、そこから人間の機能を明確にすることができるのです。
こうした思考での研究では、ロボットはあくまでもツールの一つであり、ロボットを使う方がわかりやすいだけで、システムやモノという方がしっくりきます。

人間が最も知りたいことは、「自分自身」だと瀬島准教授は考えます。
人は意識的に、時には無意識に自分にメリットがあるように行動しますが、それはなぜでしょうか。
この疑問への答えはわかりませんが、このような「自分自身のわからない部分=人のシステムの正体」を知りたいと思う気持ちが、瀬島准教授の場合、ロボットの研究へと繋がっています。

いつか人間のヒューマンモデルが解明される時が来るかもしれませんが、それでも自分自身はわかりません。
なぜなら、ヒューマンモデルと自分は違いますし、他者もそれぞれ違うからです。
今食べたいものが人によって違うように…。

ヒューマンモデルにも、自分と他人に共通するモデルと、共通しないモデルが考えられます。例を挙げると共通するモデルには、肘は人によって誤差がありますが、ある一定以上曲げることができないといった身体の特徴があります。
一方で瀬島准教授は、「どうやって肘を置けば楽に寝られるのか」は共通しないモデルだと言います。人間として肘を曲げる特徴は共通していますが、肘をどこに置けば楽かは、共通していません。そこで個々にとって「どうしてそういう置き方が楽なのか」を知り、なぜ楽なのかといった個々のモデルを研究しています。


ここるロボット三兄弟

関西大学の先生3人で結成された、「ここるロボット三兄弟」は、既存のロボットの改善や強化ではなく、リノベーションを目指しています。

ロボットの中でも、それぞれ研究分野が異なっていますが、だからこそヒューマンのハードウェア、ソフトウェア、脳というバラバラなアプローチから生まれる可能性が期待されます。

3人の先生が、それぞれが独立的に研究しているからこそ面白い事、逆に3人で考えるからこそ多角的な視点で議論しながら生まれるアイデア。その両面からのアプローチも、画期的な何かが生まれそうな予感がしています。
3人それぞれの持つネジが、上手い具合にスパイラルしていった先にある未来が、本当に人間にとって良いものか悪いものなのか、未知数な点も研究者として興味をそそられます。

人にとって大きな発明となったスマホは、人々の利便性が上がったものの、コミュニケーションなど人間に欠かせない心の交流という点で良かったのかは、人によって評価が分かれるでしょう。
ゴリラの覗き込み行動のように、人類の祖先もアナログな方法で心の真意を掴んできました。それをロボットとして技術に置き換えること、つまりより便利になっていくことが人間にとって良いことかどうかを、しっかりと塾考しながら研究を進めることも大切です。

一方で、ロボット研究とは違うと思われるかもしれませんが、「人の感情」や「DNA」といった、人間の根幹ともいえる研究にも取り組みたいと考えています。

今はDNA解析や遺伝子操作が盛んに行われています。
人間には、豊かな暮らしや時間を子孫に残し、繁栄させたいという「種の繁栄」欲求がありますが、その欲求が埋め込まれているのがDNAではないかと思うのです。

このDNAですが、生存体系によって進化する度にいろいろと変わっていることがわかっています。とすれば、突飛に聞こえるかもしれませんが、コミュニケーションによってもDNAが置き換わるのではないか…。

そこにデジタルな思考を加えれば、デジタルによってDNAを変容させることができるかもしれません。

人間の感情の振れ幅が大きいコミュニケーションとして一番気になるのは、やはり「恋愛」です。
ポジティブにもネガティブにも作用し、その感情の振れ幅は驚くべきものがあります。
現状ロボットなどでは、恋愛と同程度の感情の振れ幅があるモノはありません。
だからこそ、同程度の感情を引き出せるモノを創り、その先にある人類にとって本当に価値のあるモノを見出し、幸せな環境づくりに挑戦したいのです。


瀬島准教授は、ユニークな視点からのロボット研究を通して、
人とは何か?自分自身とは何か?といったテーマにも挑んでいます。
そして、今後ここる三兄弟の研究から生まれてくるものは、
人類にとって何らかの影響を与えるかもしれませんが、それをどうポジティブに扱うかは、
使う私たちそれぞれにかかっているのかもしれません。


研究テーマ紹介ムービー

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