一人ひとりのニーズに合わせた、
少人数制の授業。

文学部心理学専修は,私立大学としては珍しい少人数制を実現しています。各研究室(ラボ)の教員が担当するゼミについても,他大学では3年次からがほとんどですが,本専修では2年次から始まります。2年次では,少なくとも2つの異なるゼミを体験できます。

各研究室の専門領域も多様であるため,ゼミのカラーも大きく異なり,個別学習を重視したり,グループ学習を採り入れたり,活動内容もさまざまですので,自分に合ったゼミを選びやすくなっています。

資格制度に縛られない、
自由で,魅力的な,心理学のあり方を追究します。

本専修では,新たな国家資格である「公認心理師」や「認定心理士」(公益社団法人日本心理学会)の取得を目指す教育はやりません。
 
資格取得を目指したカリキュラムは,総合的・包括的な心理学教育とは言えますが,資格の性質上,従来の心理学で主要とされる科目を配置し,その科目では定められたオーソドックスなトピックの解説に終始せざるを得なくなります。

これでは,各大学の持ち味を活かせず,特色が失われる側面も強く懸念されます。心理学の最先端のトピックや他の学問との融合領域など,新たな知が日々生まれてくる,ワクワクするような研究のおもしろさを十二分に伝えることがきわめて難しくなります。

そこで,本専修では,資格を目指す画一的な教育よりも,各教員がおもしろいと思った授業を展開できる,ユニークな心理学の教育のあり方を目指すことにしました。
 
そもそも,認定心理士は,大学で心理学を一通り学んだことを示す資格なので,「心理学専修」を卒業した人がもつ実際的な意味はあまりありません(2018年度入学生までは,必要な科目を履修することで申請可能なカリキュラムになっています)。心理学の知識を身につけたことを示すのであれば,認定心理士を取得せずとも,心理学検定(日本心理学諸学会連合)を受験するという道があります。知識のレベルも,資格と違って,級数で表されるというメリットもあります。

また公認心理師の資格を取得するには,通常は大学の4年間だけでなく,大学院での2年間の経験も必要となります。しかし,臨床職を志すのは,これまでも本専修の学生全体の数パーセント(若干名)のみでした。また大学院修了後に臨床職を得られたとしても,常勤職に就くのは難しく,非常勤を掛け持ちしてやっと生計を立てるくらいの生活になることも少なくないのが現状です。
 
本専修では,専修内のごく少数の学生のニーズよりも,さまざまな業種への就職を希望する学生や,高い専門性を身につけて研究職を志望する学生を含めた大多数の学生に資する,新しい心理学教育を目指し,カリキュラムを見直しています。他大学では学べない心理学分野に力を入れ,2022年度からは専門性をさらに深められるカリキュラムに変えていく予定です。

なお,公認心理師の資格取得希望の場合は,本学では社会学部心理学専攻が対応しています。本専修でも,臨床心理学の専門家を複数名擁しており,他大学の大学院へ進学することで,日本臨床心理士資格認定協会の「臨床心理士」の資格を取得できる道はあります。

心理学だけでなく、
人間理解を深める学問を幅広く学べます。

文学部は,「一学科多専修」制を取っており,総合人文学科という名の下,16もの専修があり,関西大学でも最大規模の学部になっています。

2020年度からは「総合人文学」科目が再編され,特定のテーマについて専修横断的に学べるオムニバス講義や演習も始まりました。たとえば,心と体の関係にも深く関わる「身体性」という問題について,哲学・倫理学,言語学,宗教学,教育学,心理学などの観点からリレー講義でアプローチしていきます。

専修が分かれるのは2年次からなので,1年次のうちに,さまざまな専修が開講する授業を受けて,よくよく考えてから,希望の専修に決めることができます。

このことは,人間を理解するうえで,心理学は1つの学問にすぎないということを知るという点でも重要です。ほかの専修が提供する哲学,倫理学,宗教学,芸術,比較文化,教育学,情報,映像,文学など,人間の「心」に深く関わる学問は,何も心理学だけではないのです。

ユニークなカリキュラムで,
各ラボを中心にして専門性を深めていきます。

総合人文学という幅広い体系のなかで,人間理解に関する知識を広く学んだ後,2年次から,各専修に分かれて,より専門的な内容を学んでいきます。心理学専修では,学生の興味に応じて,専修内外の科目を履修していきます。

専修内では,認知心理学(思考,記憶,印象,意思決定,上手な説明の特徴,文化や宗教に根ざした考え方,眼球運動との関係),発達心理学(神経発達症,自閉症,多重知能,世代間の差,高齢者,死),教育心理学(教授法,天職,テクノロジーを用いた学習,スピリチュアリティ教育),臨床心理学(カウンセリング,ユング派,人間性心理学派,ボディワーク,マインドフルネス,心理検査),文化心理学(衣食,化粧,ナラティブ,日本文化,マンガ,サブカルチャー),さらに2020年度からは芸術心理学(アート,技法・表現,感性,美醜,神経美学)などのテーマがあります。

これらについて,統計的に検証する実験心理学や,インタビューなどの言葉そのものを分析する質的心理学,また心理学のみならず,哲学,言語学,生物学なども踏まえ,さまざまな問題を論じたり,モデル化したりする理論心理学などのアプローチがあります。

必修科目

1年次

学びの扉
(心理学の入門)

知へのパスポート
(初級レベルの実験実習)

2年次

心理学専修研究1・2
(各ラボの研究テーマの紹介)

心理学専修ゼミ1・2
(ラボ毎の少人数のプレゼミ)

3年次

心理学専修ゼミ3・4
(ラボ毎の少人数のゼミ)

心理学専修研究3
(基礎的な調査法・分析法)
※22年度以降は「仕事と生活に活かす心理学」リレー講義

心理学専修研究4
(発展的な調査法・分析法)
※22年度以降は「スペシャルトピックス心理学」リレー講義

4年次

心理学専修ゼミ5・6
(ラボ毎の少人数のゼミ)

卒業論文

選択科目(2021年度入学生まで)

  • 心理学概論a
  • 心理学概論b
  • 認知心理学a
  • 認知心理学b
  • 臨床心理学概論
  • 心理的アセスメント
  • 心理統計法a(数年内に廃止予定)
  • 心理統計法b
  • 心理学特殊講義a(文化心理学)
  • 心理学特殊講義b(芸術心理学)
  • 発達心理学a
  • 発達心理学b
  • 心理学講読演習a
  • 心理学講読演習b(数年内に廃止予定)
  • 質的研究法

選択科目(2022年度入学生から)※予定

  • 心理学の諸理論  
  • 脳と意識の科学
  • 性格と個人差の心理学
  • 感情と共感の科学 
  • リアリティの心理学
  • フィクションの心理学
  • 子どもの発達多様性
  • 人間発達と教育の心理学
  • 文化と自己の心理学
  • 芸術と感性の認知神経科学
  • スピリチュアリティと宗教性の心理学(22,23年度は「心理学講読演習b」として開講)
  • 心理学英文講読演習
  • 個性の記述法
  • 心理・行動データの収集法
  • 心理・行動データの分析法

共通教養科目(選択)

  • こころを科学する
  • 自己をみつめる
  • 文化・社会と心理学
  • 心理学を学ぶ
  • 子供から大人への過程を考える

専修横断科目

  • 専修横断演習(現代文化論):心理学専修からは木戸先生が「化粧文化」を取り上げます。
  • 専修横断講義(身体論):心理学専修からは菅村先生が「身体心理学」を取り上げます。

ほかにも,全学共通科目として心理系の授業は多くあります。
また文学部では,哲学,教育学,言語学,美学などをはじめ,心理学以外の専修でも,幅広い「心」の理解に寄与する科目が多く提供されています。

注意:2022年度以降の変更はまだ確定ではありませんが,学べる内容やトピックについては,上の一覧と大きな違いは生じず,2021年度以前の入学生も同様に学べる予定です。

文学部での学びを活かした
資格もあります。

教員免許状

国語、英語、社会、地理歴史、公民、フランス語、ドイツ語、中国語といった、文学部で取得可能な教員免許状は、履修のしかたで、どれでも心理学専修から取得できます。

その他の資格

図書館司書司書教諭社会教育主事補等の資格を取得することも可能です。

就職する人もいれば、
進学する人もいます。

心理学専修の卒業生の就職先は,文学部の他専修と大きな違いはありません。金融業,保険業,製造業,卸売業,小売業,マスコミ,公務員,教育,医療,福祉などがメインです。

心理学専修では,科学的に論理立ててレポートを書いたり,データを統計的に分析したりするスキルが身につく教育を心がけています。きちんとわかりやすく説明したり,相手を説得したり,効果的なプレゼンテーションをすることについても,心理学では多くの研究があり,本専修でも専門的に取り扱っています。そのようなことを体系立って学ぶことで,業種を問わず,心理学の知識は大いに役立てられるはずです。

大学院への進学も1割弱います。本学の心理学研究科や,他の私立大学や国公立大学の大学院に進学する人もいます。修士号を取った後に,より専門的な知識が活かせる一般企業や福祉施設に就職する人もいれば,公務員になる人もいます。心理学の知識を活かして,家庭裁判所調査官,児童相談所や警察,教育委員会,大学,病院での心理専門職・心理相談員として活躍している人もいます(本専修は公認心理師資格には対応していないが,他大学院で臨床心理士を取得する道はある)。また博士号を取って,大学の教員になる人もいます。