圧電素子の振動を利用した空気流量制御弁

背景・目的

圧縮空気を駆動源とする空気圧機器,空気圧技術はオートメーションを代表する技術とし生産設備などで広く使用されている.空気圧制御は操作性,耐環境性,経済性及び安全性に優れると位置づけられている.また,引火,爆発等の危険性がなく,空気圧の圧縮性による柔軟性を有しており,安全性も高く,医療ロボットやパワーアシスト機器などへの応用も行われている.一方で,空気圧システムは空気の圧縮性,空気圧配管での伝達遅れなどの影響により,制御性が低いという欠点がある.この問題を解決するためには,連続的な空気の流量制御が可能な制御機器が必要とされる.しかし,これらの制御機器は質量が大きく,応答性が低い.本研究では,圧電素子の振動を利用した,空気流量制御弁の開発する.

制御弁駆動原理

開発する制御弁の基本的な駆動原理を図1に示す.この制御弁はオリフィス板,微粒子,圧電素子から構成されている.オリフィス板には複数の微小孔が設置されている.微粒子はオリフィス板内に配置されている.管路内部に空気が供給されると,図1(a)のように,微粒子がオリフィス開口部に押し付けられ空気の流れを防ぐ.ここで,圧電素子によりオリフィス板を振動させ,微小孔上の微粒子に外力を加えると,図1(b)のように,微粒子が微小孔より離れ空気が流れる.圧電素子に印加する電圧を調整することで,微小孔の開口数を制御することができ,流量を調整することが出来る.この原理では,弁を閉じるための機構が不要となり,小型軽量化が容易である.また,圧電素子を駆動に用いるため,弁の応答性も高い.

図1 制御弁の駆動原理

 

制御弁試作機

開発した制御弁の試作機の構造を図2に示す.試作機は内部が空洞となっており,空気を供給するための配管チューブが固定されている.圧電素子に交流電圧を印加する事で,試作機先端のオリフィス板が振動する.オリフィス板の変形量は圧電素子に印加する電圧で調整できるので,電圧により空気流量を調整することが出来る.図3に試作機の振動シミュレーションの結果を示す.ある周波数においてオリフィス板が大きく変形していることがわかる.実際に製作した試作機を図4に示す.試作機は直径20m,長さ80mmである.オリフィス板には変形が大きな中心付近に直径0.4mmの微小孔が12個設置されている.

 

 

左:図2 試作機構造  右:図3 振動解析

 

図4 試作機

 

流量制御実験

図5は開発した試作機を用いて流量制御実験を行った結果である.実験は印加空気圧0.5MPaで行い,空気圧は制御弁を通って大気に排出される.微粒子として,直径0.8mmの鋼球を用いて,印加電圧を0から140Vp-pまで変化させた.実験の結果より,印加電圧の上昇に伴い,連続的に排出流量が増加していることが確認できる.これは,印加電圧により,オリフィス板の振幅が増加し,微小孔の開口数が増加したためである.この結果より,電圧により空気流量を連的に制御できることが示された.

図5 流量制御実験結果