ビトリファイド超仕上げ砥石の作用面トポグラフィーの形状モデリング

緒言

軸受加工に多用されるビトリファイド超仕上げ砥石では,不断の仕上げ面品位向上の要請に応えるため,超微粒砥粒の利用が進められている.そのため,仕上げ性能を左右する砥石作用面上の砥粒や気孔の分布状態の観察,評価が難しくなり,新砥石の設計・開発の支障となっている.砥石構造の設計図として利用可能なモデルをこれまでに提案してきたが,砥石作用面トポグラフィーのモデルについては未開発であった.そこで,砥石の構造モデルから得られる砥粒の空間分布のフラクタル次元をパラメータに,砥石作用面のモデルを構成することを検討した.

 

砥石の構造モデルと砥粒の空間分布

ビトリファイド超仕上げ砥石の SEM 写真を図 1 に示す.また,これに対応する砥石の構造モデルを図 2 に示す.本モデルは,主に砥石構成要素の混合撹拌と焼成によって組織化されるビトリファイド超仕上げ砥石の構造を,拡散律速凝集アルゴリズムと砂山崩落アルゴリズムを適用して作成されたものである.ランダムに分布する砥粒を様々な結合橋で架橋するモデルは,正六面体や正四面体の各頂点に砥粒を配置し,それらを円柱の結合剤で架橋する従来のモデルとはまったく違っており,実際の砥石構造により類似している.

いま,本モデルを任意の平面で切断し,切断面から砥粒の半径内に中心がある砥粒を,砥石作用面上に分布する砥粒と考える.図 3 は図 2 の構造モデルを切断したときに得られた砥粒の分布状態である.球の直径の違いは砥粒の高さの違いを表している.これに対して,図 4 は図 1 に示したビトリファイド超仕上げ砥石の作用面の鳥瞰図と,砥粒径の 1/2 の深さの範囲に存在する砥粒の分布状態を表す図である.実砥石と砥石モデルの砥粒の分布状態を定量的に評価する.そこで,得られたフラクタル次元をパラメータに,砥石作用面のモデルを構成することを検討した.

 

砥石作用面モデルを構成した結果を,図 5 に示す.モデルの鳥瞰図からは,激しい起伏をもったトポグラフィーが形成されている様子しかわからない.そこで,ある高さの切断面に現れる島を描いた図をみると,図 4 に示した砥石作用面の砥粒分布と類似していることがわかる.すなわち,砥粒が集まって島を形成し,それが平面上で偏って存在している様子が描画されている.

以上より超微粒の砥粒を用いた超仕上げ砥石の作用面における砥粒分布を推定することができるツールを得た.