研究紹介

摩擦は摺動面で発生した現象なので,トライボロジーの問題は摺動面で解決すべきだと言われている.そこで,本研究グループは,さまざまなその場分析(解析)技術を中心にして,トライボロジーの研究を展開している.下記に研究の一部を紹介する.

・超低摩擦システムの開発

平面構造をもつ潤滑油の分子設計や,摩擦界面の制御による摺動面に低摩擦・耐摩耗性物質のその場生成促進技術の研究などで,低摩擦システムの開発を進んでいる.

例えば,上図に示すように,顕微FT-IRその場観察システムを用い,平面構造を持つ潤滑油は分子配向しやすくなり,摩擦係数は39%低減したことが見だした.

・摩擦・摩耗の電気制御技術の研究

電気自動車の急増にともない,トライボロジーに関連する技術への要求も大きく変化している.トライボロジー諸現象に及ぼす電場の影響の研究を行うことで,EV車の摩擦・摩耗を制御できるように研究を行っている.

電流の制御で,潤滑油分解による生成したグラファイトやDLCをコントロールでき,摩擦係数の低減は実現した結果を例として,左図に示す.

・潤滑油のトライボ化学分解に関する研究

水素脆化の原因の一つとした潤滑油のトライボ化学分解に対して,難分解性潤滑油の検討や表面コーティングの水素侵入抑制効果等を研究している.

右図に示したのは, DLCコーティング の水素侵入抑制効果である.軸受の軌道面にDLCコーティングすると,軸受内に侵入した水素が明らかに減少した.DLC表面に潤滑油の低トライボ化学分解性・低摩擦特性などは水素侵入抑制できた主な原因となった.

・トライボフィルムに関する研究

ミクロの視点から数十nmから200nm未満であるトライボフィルムの摩擦特性を評価している.摩擦表面の設計からトライボフィルムの最適化研究を進んでいる.

ZnDTP由来のトライボフィルムの摩擦係数の面分布(左図)と表面形状,表面化学成分の面分布を比較したところ,表面形状より,化学成分はトライボフィルムの摩擦特性に大きく影響したことが分かった.

・機械学習を用いたメンテナンス技術の開発

トライボロジー分野の更なる発展には,データサイエンスの応用は必要となったため,機械学習を用いて,潤滑油劣化および摺動部異常摩耗のセンシング技術の研究開発も進んでいる.

右図に示すように,AEセンサーは摩擦係数の変化に敏感であり,摩擦係数を測定できない実機に置いて,機械学習方法を用い,AE計測結果から摺動部のトライボロジー特性を予想される.