概要

研究の全体概要

気候変動による暑熱環境に着目し、健康への影響として重要な関係が指摘される熱中症と脱水症状で悪化する隠れた心筋梗塞・脳梗塞等に焦点を当て、それらの関係を、救急搬送データを中心としたエビデンスベースの疫学研究により再評価する。再評価の視点は、人々の睡眠、室内・外出行動とそれを支える地域別の社会基盤・環境の違いが暑熱環境と発症・重篤化の関係性に影響を与えている点を明らかにすることである。それにより、これらの生活習慣病のリスクを軽減する予防的健康行動の支援や暑熱の感受とセルフケアの行動選択と変容が、暑熱環境に適応する行動を支え、環境への積極的な関与(ライフスタイルのシェア)に向かう好循環を生み出し、それを支援する地域別の社会基盤整備と関連づけながら社会システムの創生を図る事ができる。特に、市民の行動については、健康維持のための外出や歩行の取組みからのアプローチと暑熱環境改善のための緑化などのアプローチの双方から実証的に分析を行い、互いのリスクを同時に軽減できることを明示的に気付くことが、さらなる行動変容に繋がることを確認する。また、そのために必要な省エネルギーと両立する室内生活環境および酷暑によって減少する涼やかな屋外環境の維持などに焦点を当てた地域特性別の社会基盤・環境を提示する。さらに、これらの実効性を確認し、気候変動のプロセスや行動変容の熟度に合わせ、持続的に改善していくための仕組みとしてリビングラボの取組みを実際に稼働させる。健康と環境の好循環を紐づけたSDGsの取組みを共創のプラットフォームで展開し、準備を行ってきた吹田市、豊中市等のNPO団体と共に利用者・市民、NPO、地方自治体、企業、大学が一体となり、試行の実践的取組みを有効かつ、他へ移転可能な(スケーリング)プロセスデザインを行う。その際にENoLL等の社会イノベーションに学ぶ。

3年間の研究期間では、中長期的な期間を要する変容のうちの初期的効果を確認する。各年度の夏を中心に、1年目をプロトタイプ試行、2年目を本格実施、3年目を検証という位置づけで実施する。