研究内容


微粒子・ナノ粒子の表面物性の評価

 ナノ粒子とは、1-100nmのサイズであり一般的な大きさの固体(バルク)の材料とは異なる特有な性質を示す。しかし、ナノ粒子はミクロンオーダーの微粒子と比べて比表面積が大きく凝集しやすい問題点があったため、微粒子やナノ粒子といった物質の表面物性を知る事が大事なためHSPを用いて表面物性を評価することで微粒子やナノ粒子の分散・凝集を制御可能といった様々な制御が可能になった。

+ High affinity + -Low affinity-

(Ra=3.9MPa1/2) (Ra=11.4MPa1/2)

花粉より溶媒の距離が小さいと、

 より花粉粒子を捕集可能

小型粘度計による全血液の流動特性自動解析システムの開発

 循環器系疾患の予防や治療の観点から血液の粘度は重要な基礎物性である. しかしながら採血量や測定時間等の問題から、採血直後の血液の粘度測定は容易でなく実測例も少ない.
 本研究室ではこれまで、血液の粘度を高精度で測定可能な小型落針式粘度計(Falling Needle Rheometer)の開発を行っており、高精度測定かつ操作性をさらに高めるために、 血液粘度測定操作の自動化および流動特性の自動解析システムを組み込んだ新しい装置を開発している.

逆相ガスクロマトグラフィー(IGC)を用いたHansen溶解度パラメータの算出

現在HSP測定方法は、固体物質が有機溶媒に対しての評価基準が実験者依存するため求まるHSPが異なることなどが困難という問題が存在します。従来の実験方法に代わる新たな指標として定量的に親和性評価が可能なIGCに着目し、HSPの新規算出手法を提案しました。従来の実験方法では評価が不明確な固体物質の親和性を定量的に評価が可能になった。

ポリマーに関する相溶性評価および研究

 機能性材料の開発において単一の物質では目的の機能(高耐熱性や機械的強度等)を発現させる事は難しく、ポリマー中に微粒子を添加する手法を用いて目的の機能を発現させる。本研究室では、数ある機能性材料の中でもスマートフォンの普及と共に需要が急速に拡大したポリマーフィルムの透明性に関して研究を行ってきた。

生体材料に関するHSP算出法の確立およびHSP推算の研究

眼に対する薬品の有害性試験は、主にOECD TG 405に収載されているin vivoウサギ眼試験(Draize試験)が行われてきた。しかし、動物愛護の理念のもと近年化粧品分野では、EUを中心としてDraize試験を実施した化粧品の販売が禁止されている。このような現状の中、in silicoによる刺激性予測が可能となれば、時間やコストの削減につながることは言うまでもない。そこで本研究では、過去に報告されているin vivo試験結果にHSPを適用して刺激予測の可能性を検討した。その結果、刺激性とHSPの間に高い相関関係を示した。これらの結果は、HSPが将来、高い精度で眼刺激性を予測できるツールとなる可能性を示唆した。現在は、眼以外の生体材料に関するHSPの適用について研究している。

※日本動物実験代替法学会第33回大会において板垣宏学生奨励賞を受賞

水酸化リチウム(LiOH・H2O)の合成プロセスの開発

 現在、高容量かつ高出力な電池としてリチウムイオン二次電池の開発が行われている。リチウム材料として広く用いられる高純度な水酸化リチウム(LiOH・H2O)の合成は、炭酸リチウムおよび水酸化カルシウムを用いた多段加熱濃縮プロセスが一般的である。しかし、既存プロセスは多量の水や蒸発操作による多大なエネルギーの消費が問題となっている。そこで、本研究室では省エネルギー化および省資源化を目的として、晶析法によるLiOH・H2Oの合成プロセスについて研究してきた。当プロセスは原料系に濃厚系水溶液を用いるため多量の水を必要とせず、常温系での反応晶析が可能である。

環境応答型高分子ゲルの自立応答を利用した分離材料への応用

 半導体製造工場ではシリコンウェハの洗浄工程およびエッチング工程でフッ酸を一成分とする酸混合溶液(フッ酸– 硝酸系,フッ酸– 硝酸– 酢酸系など)が使用されており, 使用済みの混酸廃液が多量に発生している.本研究室では,共沸混合物である硝酸– 水系の気液平衡関係に及ぼす塩効果を測定し,この塩析効果を利用して希薄な硝酸廃液から硝酸の分離・濃縮について検討している.
 また,フッ酸– 硝酸系混酸廃液に対しても塩効果(塩析および塩入効果)を利用した蒸留法により,フッ酸を一成分とする混酸廃液からフッ酸を分離することを試みている. 添加する塩として,硝酸セシウム,硝酸カリウム,フッ化カリウムを選び,硝酸– 水系およびフッ酸– 水系の気液平衡関係におよぼす塩効果を測定し,分離プロセスの提案を行っている.

膜などの機能性分離材料の開発と分離プロセスへの応用

 本研究室では,地球温暖化ガスである二酸化炭素の分離,有機物-水系の混合物の分離材料の開発や分離プロセスへの応用を行っている. 二酸化炭素の分離についてはアミノプロピル基で表面修飾した多孔質シリカやゼオライトを用いた吸着剤,膜材料の開発やプロセス評価を行っている.
 また,シリカ表面をフェニル基で修飾することによって膜と有機物質との親和性を向上させた疎水性シリカ膜を提案し,酢酸エチルなどの有機物の分離特性について検討を行っている.さらに,さまざまな有機溶媒を含む排水から有機物質の効率よく分離・回収するために,目的物質に応じて最適な化学構造を有する膜の設計技術についても研究を行っている.

反応と分離プロセスの複合化による新エネルギーの新規製造プロセスの開発

 本研究室では,化石燃料に代わる新エネルギーの製造プロセスにおいて,膜を使った新しい分離プロセスや反応と膜分離を組み合わせるメンブレンリアクターの研究を行っている. 新エネルギーの一つである水素は燃料電池用のクリーンなエネルギーキャリアとして注目されている.燃料電池は発電効率が高く,発電時に二酸化炭素を排出しないが, 燃料となる水素を製造する際の高効率化が課題の一つである.
 従来のPSA法などの水素精製技術よりも省エネルギーでコンパクト化が期待できる膜分離プロセスについて, アモルファスシリカを用いた分子ふるい機構による水素分離膜の高性能化や,水性ガスシフト反応と組み合わせるメンブレンリアクター,酸素イオン-電子混合導電体である酸素分離膜を 使った水素製造プロセスについて検討を行っている.