東京は新橋で開催されている「子どものための建築と空間展」を訪れた。月曜の午前中とは思われないくらい開展から人が並んでいた。展示物は6つの区画に別れている。
Ⅰ. 子どもの場の夜明け 明治時代。Ⅱ. 子どもの世界の発見 大正時代、インターミッション. 戦争前夜に咲いた花 Ⅲ.新しい時代の到来、子ども達の夢の世界を築く 1950-1970 Ⅳ. おしゃべり、いたずら、探索-多様化と個性化の時代 1971-1985 Ⅴ. 今、そしてこれからの子どもたちへ 1987〜。

パンフレットには次の言葉が掲載されていた。
「私たちが子どもの時に過ごした空間は、原風景として長く記憶に留まり、その後の生き方や考え方の形成に与える影響は少なくありません。本展は、子どもたちのためにつくられた学びの場と遊びの場の建築と空間のなかから、日本の近代の建築・デザイン史において、ひときわ先駆的かつ独創的なものを紹介する展覧会です。
日本の近代教育は明治時代に始動し、校舎の建築もそこから始まりました。民衆に愛された明治の擬洋風建築の校舎、大正自由教育の時代の造形豊かな小学校、1970年代の先駆的なオープンスクールなど、さまざまに変遷し、子どもたちの活動を受け止めてきました。各建築ごとに、子どもたちが親しみを持てるシンボリックな外観が考案され、心安らぐインテリアの充実が図られるなどの工夫も重ねられてきました。一方、幼稚園・保育所や学校以外の遊び場や読書の空間といった子どもたちの居場所にもユニークな取り組みがあります。それらを、作り手と使い手の両方に着目しながら選んだ写真、図画、模型といった作品資料の展示を通してごらんいただきます。また、教育玩具や絵本の原画なども選りすぐって紹介します。社会のあり方が大きく変化する現代、本展がこれからの子どもたちの育つ環境づくりのインスピレーションとなれば幸いです。」
フレーベルの「恩物」、『赤い鳥』、『キリン』の原画などの展示もあり、「建築と空間」というタイトル通り建築に限らず広く「環境」をテーマにした催しものとなっていた。個人的には、環境構成に込められた教育思想・子ども観に関する説明があるとより楽しめたと思う。例えば、「大正自由教育の影響」とあった「自由学園明日館」の作りの、どのようなところが、子どもの自発性を引き出す役割を担っているのか、といった視点である。いや、逆にそれはこれからの研究課題なのかもしれない。
例えば僕の興味に引きつけて、「子どもと建築の教育思想—『教えずして学ばせる』技術としての環境」という観点で「子どものための建築と空間」を眺めれば、ドイツの田園教育舎研究などに学びつつ、以前訪れた日本の保育園、認定こども園を思想史的に位置付けることも可能なように思われた。