
| 報告者 |
| 文学研究科 3年次 毛鋼 |
| 渡航先 |
| イタリア ローマ(ローマ大学、サンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂、サン・ピエトロ大聖堂、パンテオ、バチカン美術館、ローマ国立博物館、ローマ文明博物館) |
| 研究活動期間 |
| 2025年9月10日 ~ 2025年9月20日 |
目的・概要
井上靖は昭和三十年代、ローマ・オリンピックの取材のため実際にローマを訪れ、美術館や博物館を巡るなかで得た体験を、小説『ローマの宿』をはじめとする作品に反映させている。
今回、私はローマ大学での学会発表にあわせて現地調査を行い、井上靖が目にしたであろう風景や資料を自らの目で確かめることで、文学と歴史、さらには文化交流の背景理解を一層深めることを目的とした。
現地の様子や渡航を通じて感じたこと
ローマ滞在中は、フォーラムの一環として世界的に著名な教会や美術館を訪れ、井上靖が実際に足を運んだ可能性のある空間を追体験する機会を得た。壮大な聖堂建築や古代遺跡を目前にしたときの圧倒的なスケール感は、文献資料だけを通じてでは決して味わうことのできない臨場感を与えてくれる。遺跡の石の質感や天井画の光の反射、空間を満たす静謐な空気は、読書や研究によって得られる知識を具体的に裏づけると同時に、文学作品の描写をより鮮やかに立ち上がらせるものであった。こうした体験は、文学と歴史の相互関係を多角的に考察するための新たな視座を与え、研究を進めるうえで大きな示唆をもたらしたと感じている。
また、現地での研究者や学生との交流を通じて、自らの研究を相対化することができたのも大きな成果である。異国の地で異なる視点をもつ研究者と議論を交わすことは、自身の研究を批判的に捉え直し、新しい視点を取り入れる契機となる。とりわけ、自分の研究分野を越えて幅広い関心をもつ人々と意見交換を行うなかで、自分では思い至らなかった問いを突きつけられる瞬間も多く、その刺激は今後の研究活動を推進する大きな力になると実感した。
今後、海外で研究活動をする関大生へ一言
異国の研究者や学生との交流は、自らの研究を相対化し、新しい視座を得る貴重な機会でもある。

