
サッカーで決闘?
ドイツ滞在中の2009年、ドイツ女子サッカー選手のLira Bajramajに注目していた。日本の「野人」岡野に似て、超人的なスピードでコートを走り回る姿に惚れ惚れしていた。どこかで読んだ彼女の記事に、Zweikampfでけがをしたとあった。試合中、取っ組み合いのけんかにでもなったのかと思っていたが、私のサッカーの知識がなさすぎた。Duell(英語duel)と同じく、1対1の攻防のことを言うらしく、けんかをしたわけではなかった。 もう一つ、とんでもない勘違いがあった。Torschützeをゴールキーパーと思い込んでいた(ゴールキーパーはTorwart)。schützen(守る)への誤った類推である。Schützeは古いゲルマン語の造語法によってschießen(英語shoot)から作られたもので「撃つ人、射手」を意味する。星座の射手座もSchützeである。そんなわけでTorschützeはストライカー、点取り屋のような意味で使われている。それにしても辞書ではSchützeのすぐ次にschützenがあり、まぎらわしいことこのうえない。 もう少しSchützeにこだわり、語源辞典(Etymologisches Wörterbuch des Deutschen, Akademie Verlag)やグリムの辞典を見てみる。すると射手から武装した見張り役(Wächter)の意味が派生し、Flurschütz(畑や放牧地の監視員、中高ドイツ語vluorschütze)などに残っているという。ただこうなると意識としてはschützen(守る)と関連づけてしまうらしい。ということは、私がTorschützeをゴールキーパーと勘違いしたことは、あながちとんでもない間違いではないかもしれない。こんなことで意地を張ってどうする!執筆者:工藤康弘...