ルターのイソップ寓話「狼と小羊」で、狼は小羊に理不尽な難癖をつけ、しまいに言い放つ:

Vnd wenn du gleich viel aüsreden vnd schwetzen kanst, wil ich dennoch heint nicht vngefressen bleiben
おまえはあれこれおしゃべりをして言い逃れていられるようだが、今日こそ何も食べないままではいないぞ

こうして狼は小羊を食べてしまう。コラム「未来分詞」でも述べたが、他動詞の過去分詞は受動の意味(z.B. die zerstörte Stadt 破壊された町)を持ち、自動詞の過去分詞は完了の意味(z.B. im vergangenen Jahr 昨年に)を持つのが普通である。vngefressen(= ungefressen)は狼自身のことを言っているので、受動の意味には考えにくく、かといって「食べないで」ととるには少し違和感がある。

ただ小学館の独和大辞典コンパクト版ではungegessenという見出し語があり、「何も食べていない」「食事をしていない」という意味が載っている。してみると、こういう能動的な意味があるということか。この辞書では自動詞という項目はないが、目的語なしで「食事をする」という意味を載せているので、このungegessenは自動詞の過去分詞と考えてもいいかもしれない。

ほかにも例はある。グリム童話にTischchen deck dich, Goldesel und Knüppel aus dem Sack(テーブルよ、食事の支度をしろ、金のロバ、棍棒よ、袋から<出ろ>)という、タイトルもテキストも長い話がある。重要な箇所だけ述べると、ある職人が見習いを終えて旅に出るとき、親方から魔法のテーブルをもらう。Tischchen, deck dich!「テーブルよ、食事の支度をしろ」(こういう再帰表現もおもしろい)と言うと、たちまちごちそうが出てくるというすぐれものだが、立ち寄った宿屋の主人に普通のテーブルにすり替えられてしまう。何も知らない職人が親戚や友人たちの前で、魔法のテーブルを実演しようとするのだが、何も出てこない。そこで次の文になる:

Die Verwandten aber lachten ihn aus und mußten ungetrunken und ungegessen wieder heim wandern.
親戚の人たちは彼を嘲笑し、飲まず食わずで家に帰らなければならなかった。

見てのとおり、ungetrunken und ungegessenという表現が使われている。最後にいわゆる民衆本の一つHistorie von dem gehörnten Siegfried(角質のジークフリートの物語)の例を挙げる。

Siegfried eilet seinem Hunde und dem Gespure des Wurms bis an den vierten Tag, ungegessen und ungetrunken, nach, bis er endlich am vierten Morgen hoch über das Gebürge kam.
ジークフリートは飲まず食わずで四日間にわたり犬を追い、怪獣の跡を急いで巡りました。そして四日目の朝とうとう高い山を越えたのです。(『ラーレ人物語 不死身のジークフリート』国書刊行会)

こうしてみると、ungegessenやungetrunkenは能動的な意味で使えるようである。それならば、たとえばungeschwommen(泳がないで)、ungesungen(歌わないで)といった表現が可能なのだろうか。ここまで来ると私としては手に負えなくなるので、筆を置きたいと思う。

執筆者:工藤康弘