研究テーマ

 我々の体内では、多くの酵素が化学反応を触媒し生命活動を維持している。酵素反応では様々な分子間相互作用を用いて基質を『認識』することによって、効率よく必要な化合物を生成している。分子認識化学研究室では、この分子認識に用いられる分子間相互作用=非共有結合性相互作用を探究し、また、これらを用いて『分子を認識』することにより必要な化合物を取り出すことを目標としている。

1. 金属錯体を用いた非共有結合性相互作用の解明

 芳香環は様々な官能基と非共有結合性相互作用することが報告されており、分子認識場で重要なはたらきを担うことが期待できるが、その詳細は明らかとされていない。当研究室では、芳香環-金属イオン部位に着目し、これらが関与する非共有結合性相互作用について詳細に検討している。現在行っている研究テーマは次の通り。

  • エチレンジアミン類縁体により結合された金属-芳香環部位を持つ金属錯体と生体関連物質との相互作用の検討
  • 芳香環を有する環状配位子の錯形成能、ならびにこの金属錯体と芳香環含有化合物の間にはたらく相互作用の検討

2. 結晶化法によるラセミアミノ酸およびその誘導体の光学分割

 光学活性非天然アミノ酸は、医薬品の原料などとして有用な化合物であるが、自然界から直接獲得することは困難である。これらを得るのに現在工業的に最も用いられているのは、ラセミアミノ酸あるいはその誘導体を光学分割する方法である。このことから当研究室では、結晶化法による光学分割に適したアミノ酸誘導体の検討を行っている。現在行っているテーマは次の通り。

  • 非天然アミノ酸 α-アルキルセリン類の合成と立体異性体の分離
  • トレオニン類縁体の合成と立体異性体の分離法の確立

3. 金属錯体を用いたラセミアミノ酸の光学分割法の開発

 結晶化法による光学分割法は経験に基づく手法であり、用いるラセミアミノ酸によって光学分割法は異なり煩雑である。このことを解決すべく、多くのアミノ酸を同一手法で光学分割可能な金属錯体の開発を行っている。現在行っているテーマは次の通り。

  • D-ピペコリン酸を基本骨格とする配位子を用いた金属錯体によるアミノ酸の光学分割法の開発
  • L-ヒスチジンを基本骨格とする配位子を用いた金属錯体によるアミノ酸の光学分割法の開発