多糖とは

多糖の定義

多糖とは、単糖がグリコシド結合によって多数結合したものを指し、構成する単糖の種類が1種類のものを単純多糖、2種類以上のものを複合多糖と呼びます。

多糖の種類

皆さんもご存知のデンプンやセルロースを始めとして、当研究室でも取り扱っているキチンやキトサン等、非常にたくさんの種類があります。

キチン・キトサンの研究

酸によるキトサンの架橋

歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり、深くなった部位に細菌が入る事で歯茎の炎症が進行し、最終的に歯を支える土台である歯槽骨を溶かしてしまいます。そこで、深くなった歯周ポケットに対して、詰め物として抗菌性を有する物質が求められました。しかし、抗菌性を有するキトサンのみでは、詰め物としての強度が不十分でした。本研究は、抗菌性を有するキトサンに光架橋可能な桂皮酸を導入し、光を照射することで、硬化可能な詰め物(ゲル)を目指しました。

イオン液体含有キトサンシートの調製

一般に、金属塩に代表される電解質は、加熱や過充電による異常膨張、爆発等の様々な問題点があります。それに代わる電解質として、イオン液体(IL)が近年注目されています。また、CSやアルギン酸等の天然高分子にILを含浸したシートが固体電解質として有効であることが近年、報告されました。しかし、キャスト法により得られたCSシートは機械的強度が乏しく、高強度を必要とする固体電解質として使用することができませんでした。

そこで本研究では、CSシートの機械的強度を向上させるため、ポリマーと架橋剤を用いて網目状高分子の調製を行い、さらに重合時にCSを添加することにより、semi-IPN構造を形成させることを試み、電気的特性にも優れた固体電解質の調製を目的としました。

キトサンコーティング繊維によるCs除去

2011年に起きた福島第一原子力発電所における炉心損傷事故時の緊急冷却剤として大量の海水を使用した結果、核燃料の放射性核分裂生成物で汚染された廃水が周辺に拡散しました。汚染した種々の放射性核種の中でセシウム-137 (以下、Cs) は30.15年と比較的長い半減期を有しており、この核種による長期的な放射線被曝によって深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。放射性セシウム含有汚染水の除染には、吸着能の優れたプルシアンブルー (以下、KFe) を吸着材として用いる方法がありますが、KFe粒子の大きさは非常に小さいため使用後の吸着材を多量の汚染水から回収するには困難とされています。

そこで本研究ではレーヨン繊維にキトサンを固定化させ、そのキトサンにKFeを担持させることで、二次処理を必要としない新たな除染用吸着材の調製を行いました。放射性セシウム吸着能の測定を行ったところ高い吸着能を示し、これはフリーのKFeに匹敵する吸着能でありました。今後はセシウムの脱着挙動を研究し、吸着材の再利用を目指す予定です。