緒言(Introduction)の書き方

主題がはっきりしていて分かり易い論文の緒言(introduction)には、次の4つが書かれています。

  1. どんな分野の研究なのか
  2. これまでにどのような研究がなされてきたのか
  3. 何がまだできないのか(わかっていないのか)
  4. それをどのようなアプローチで実現するのか(解明するのか)

たとえば、固体連続併行複発酵システムの場合であれば、

  1. バイオマスから生産するエタノールはカーボンニュートラルであり、持続可能なエネルギー源として注目されている。
  2. 炭水化物を糖化・発酵し、蒸留によってエタノールを得る様々なプロセスが開発され、その効率の向上が検討されてきた。
  3. しかし、実プロセスにおいては、発酵液の9割を占める廃水を処理するコストが問題になっている。
  4. そこで、炭水化物、糖化酵素、酵母を最小限の水とともに混合し、併行複発酵によって生じるエタノール蒸気を凝縮塔に循環させて回収することにより、廃水がほぼゼロのシステムを開発した。

などと書くことができます。あなたが読んだ論文のうち、これは分かりやすくて良い論文だ、と思う論文のintroductionを読み直してみてください。上述の4つの要素がバランス良く書かれているはずです。

あなたがintroductionを書くときは、次のような手順で書いてみるとよいでしょう。

  1. まず、緒言を4つのセクションに分けます。
  2. あなたの研究を説明するのに必要なキーワード(あるいはセンテンス)を、まず、上述の4つのセクションに割り振ります。このとき、一つのキーワードを複数のセクションに割り振っても構いません(上述の例であれば、「エタノール」は1,2,4に出てきます)。
  3. それぞれのセクションに割り振られたキーワードを適当な順番に並べます(文の流れを意識して並べます)。
  4. 逆接、順接の接続詞を入れます。
  5. 文の流れが悪ければ、キーワードの順番を入れ替えたり、足りないキーワードを補ってみます。
  6. どうしても流れが良くならなければ、あまり重要ではないキーワードを外してみます。

就職活動の際、エントリーシートを書いたり、面接で卒業(修士)論文のテーマの説明を求められた時にも役に立ちます。面接の場合、まず最初に20~30秒ほどで自分の論文のエッセンスを述べるのがコツですが、上述の例であれば、

「バイオエタノールは持続可能なエネルギー源として注目されており、
炭水化物を糖化・発酵し、蒸留などそれぞれのプロセスの研究が進んでいますが、実プロセスでは廃水処理コストが問題になっています。

そこで、廃水が出ない固体発酵による生産システムの研究を行っています。」

という具合です。