第1回アジア活動理論会議(The 1st Asian Conference on Activity Theory)@ 中国・武漢

2025年5月24日・25日、中国・武漢にある華中師範大学にて開催された「第1回アジア活動理論会議」に参加・発表してきました。活動理論(Cultural-Historical Activity Theory)に関心を持つアジア各地の研究者が一堂に会し、理論と実践をめぐる熱のこもった議論が繰り広げられました

http://psych.ccnu.edu.cn/info/1058/8930.htm 首届亚洲文化历史活动理论会议圆满落幕
http://news.ccnu.edu.cn/info/1003/15327.htm 学者共论数智时代的学习与发展 首届亚洲文化历史活动理论会议在校举行)。

■ 5月22日:武漢到着

初夏の風が心地よい5月22日、武漢入り。午前中は大雨だったらしく交通は若干麻痺していたものの、街は活気に満ち、洗練された大都市の風景に驚かされました。武漢といえば、日本の報道では「野生のコウモリを食べている」などといった「野蛮」といった紹介がなされていたように記憶していますが、実際は東京と同規模の人口を抱える大都市でした。


■ 5月23日:華中科技大学附属小学校 訪問・視察

翌23日には、華中科技大学附属小学校を訪問。施設見学に加え、実際の授業も視察することができました。印象的だったのは、教科横断的な特別授業——たとえば「12進法と生活・算数」をテーマにした学習や、「学びの共同体(公共性・民主主義・卓越性)」に棹さすような授業実践など、中国の教育改革の具体的な姿に触れることができた点です。子供のメンタルヘルスの改善に資するための運動の導入にも熱が入っていました。

授業後には討論会も開かれ、教育の理想と現実について、研究者・教育関係者が真摯に語り合うConvivial(共に生きる)な空間が広がっていました。無論、この附属学校はいわゆる「エリート」の学校で、中国全体の初等教育を代表できるわけではありません。しかし、教育や社会に対する希望や、メリトクラシーという物語を信じることができる社会の力強さを感じたのも確かです。

■ 5月24日:会議1日目|発表と対話

会議初日は華中師範大学にて開催され、私はこの日、自身の研究成果を発表する機会をいただきました。活動の中に生まれる矛盾を手がかりに、新たな活動への創出を助ける形成的介入研究の具体を報告し、その中で「第四世代活動理論」へ向かうための現状の限界点を示しました。法人の異なる3つの園との協働プロジェクトにおける変革的エージェンシーの形成に関する報告で、現在国際ジャーナルへの投稿に向けて論文化を進めているものです。

夜には武漢の街を少し散策。自由闊達な雰囲気と、街全体に広がる躍動感がとても印象的でした。

■ 5月25日:会議2日目|エクスカーションと対話の余韻

最終日は午前の会議参加後、エクスカーションとして、武漢の象徴「黄鶴楼」を訪問しました。かつて李白が詠んだ長江の流れを眼下に望みながら、改めてこの都市が抱える豊かな文化的深層に思いを馳せました。

故人西のかた、黄鶴楼を辞し

煙花三月揚州に下る

孤帆の遠影碧空に尽き

唯見る長江の天際に流るるを

今回の会議では、単に理論を深めるだけでなく、「理論と実践の架け橋としての活動理論」という視座を、多様な文化・教育文脈の中で再考するきっかけとなりました。とりわけ、中国の大学の「熱烈歓迎」からは、学問や研究に対する力の入れ具合の差(資金力の差)を実感させられました。私は科研の分担研究者として、科研費を利用してこの度の会議に参加したのですが、手土産すら経費では出せません。他方、中国の大学では、私レベルの若輩に対しても、歓迎の意をさまざまな形で伝える手段を持っています。この差は、単に外国人研究者の歓迎に留まらない差としてさまざまなところに現れているよう思いました。

■ 今後の展望にかえて

この度の会議は、文化・歴史的活動理論の国際学会=International Society for Cultural-historical Activity Research(ISCAR)<https://iscar.org> のregional sections <https://iscar.org/pages/regional-sections> のひとつとして、Asia regionの分離独立を目指す活動の一環です。この活動に参加させていただいていることに感謝しつつ、今後も微力を尽くしたいと考えています。