フィンランド・中国・日本をつなぐ対話の場——文化・歴史的活動理論 国際カンファレンス開催報告

2025年2月26日から3月2日にかけて、文化・歴史的活動理論(Cultural-Historical Activity Theory, CHAT)に関する国際カンファレンスが関西・大阪にて開催されました。本カンファレンスでは、世界を代表する研究者であるフィンランド・ヘルシンキ大学のユーリア・エンゲストローム教授、アナリサ・サンニーノ教授、さらに中国・首都師範大学のグ・ウェイ准教授をお迎えし、5日間にわたる実り多い対話と交流の機会が築かれました(大会サイトはこちら)。

初日の2月26日は、大阪国際会議場にて活動理論学会の会員を対象としたセミナー「Professor Yrjö Engeström’s and Professor Annalisa Sannino’s Seminar on Cultural-Historical Activity Theory」が行われ、私自身もこの場で研究発表の機会をいただきました。両教授の鋭い問いかけとあたたかなフィードバックは、今後の研究の方向性を深く考えるきっかけとなりました。

続く27日・28日は、関西大学梅田キャンパスに会場を移し、「International Seminar on Cultural-Historical Activity Theory」が開催されました。ここでは、実践に根ざした多様な研究報告が共有され、理論の国際的な広がりと、現場におけるその実装の課題が多角的に論じられました。

そして3月1日には、大阪グランフロント内の会議室にて「International Conference on the Fourth-Generation Activity Theory」のセミナーおよびシンポジウムが行われ、私も登壇の機会をいただきました。第四世代活動理論の特質については28日のレクチャーでも主題的に取り扱われましたが、会場の関心も高かったように思います。

私自身は2024年から2025年にかけて行なった保育のチェンジラボラトリーに関する報告を行いました。「英語にてすみやかにパブリッシュすること!」というエールのもと、胚細胞に関するご助言や概念形成に至るプロセスの記述方法、投稿先に関するアドバイスまで、熱心なご助言をいただきました。
3名の国際的リーディングスカラーに共通していたのは、研究発表の際の火の出る様な情熱、真剣さ、緊張感とは裏腹に、休憩や懇親会の場で見せていただいた、温和でチャーミングなお姿でした。

最終日の3月2日には、大阪城公園を舞台にエクスカーションが行われ、私も同行者として3名の先生方をご案内する役目を担いました。対話は道中も絶えず続き、移動中のささやかな雑談の中にも、多くの学びと発見がありました。特に、同世代のグ先生と交流を深められたことは、今後の研究を構想するまたとない機会・刺激になりました。

本会議は、現在私が分担研究者として参加している科研Aプロジェクトの一環です。その代表者であり、関西大学において文化・歴史的活動理論の発展に尽力されている山住勝広先生の存在は、私が本理論への関心を深める大きな契機となっています。今では、私の研究の大半はこの理論の理解と実践的な応用に注がれています。

多様な国と現場を背景とする研究者たちが一堂に会し、共に語り、未来の実践を構想する。この国際カンファレンスは、まさに「共に学ぶ共同体」としての研究のあり方を体現する時間となりました。国際カンファレンスならではのしがらみのなさ、自由闊達な意見交換、(私よりもさらに)若い世代の活躍により、未来に希望を感じる会となったように思います。
ご参加くださったすべての皆さま、そして遠路はるばるお越しくださった三名の先生方に、心より感謝申し上げます。