研究紹介

無機材料化学研究室では、「化学溶液析出法」や「ゾル-ゲル法」といった溶液を出発原料とする液相プロセスによる無機材料の合成を行っています。
“自然・生物に学ぶ無機材料合成”をコンセプトに掲げ、自然や生体中に見られる「自己組織化現象(原子・分子の自発的な集合・配列)」の要素を取り入れた新規な液相プロセスの開発に取り組んでいます。
「自己組織化」を利用したボトムアップアプローチは、常温・常圧付近の条件で実施可能な省エネルギー・低環境負荷なプロセスであるだけでなく、従来の手法では見られない複雑かつ精密なナノ・マイクロ構造が材料に自発的に発現する可能性があります。

1.自然・生物に倣った結晶成長技術による無機ナノ構造体の作製

生物が体内で行う無機材料合成プロセスである「バイオミネラリゼーション」を模倣した新たな結晶成長技術の開発に取り組んでいます。バイオミネラル(貝、珊瑚、真珠など)がもつ階層的なナノ構造を、無機化合物で再現することを目指しています。

また、優れた光学的、機械的特性をもつ無機材料を作製するためのモデルとして、「自然が創り出す宝石・鉱物」に注目しています。「鮮やかな色彩・光沢」および「高硬度・高い安定性」を併せ持つ宝石・鉱物に近い組成となるよう材料をデザインすることで、新しい無機材料の創製につながる可能性があります。

2.自然対流を利用した薄膜パターニング技術の開発

自然対流を利用した新規な「自己組織化技術」の開発に取り組んでいます。液膜から溶媒が蒸発する際に生じる「Marangoni 対流」や「Coffee-ring現象」を利用し、薄膜材料の表面に規則的なパターンを付加します。

また、パターニングだけでなく、「Coffee-ring現象」のメカニズムを応用した独自技術である“超低速ディップコーティング”によって、“金属塩と水のみを含むシンプルなコーティング液”からの無機薄膜の作製を検討しています。本手法を用いれば、安全性が高く、省資源なプロセスでの薄膜コーティングが可能となります。

3.省エネルギー・低環境負荷を目指した材料開発

上記の技術を活用し、省エネルギー・低環境負荷な社会の実現に貢献する新しい材料の創成を目指しています。電圧をかけることで透明度が変化する「スマートガラス(エレクトロクロミック
ガラス)」、太陽光発電に用いられる「光電極」の研究を行っています。