鋳鉄の組織制御
球状黒鉛鋳鉄は黒鉛が微細な球状形態で分布することから機械的性質に優れており、輸送機、産業機械、鉄管等の構造部材に幅広く用いられている。この強度特性と形状自由度には、さらなる高度化の可能性があり、凝固制御技術の向上が期待されている。
本研究室では、凝固過程における炭素の黒鉛化及び黒鉛粒数の増加技術の向上を目指して溶湯中の硫黄の活量制御やテルル添加等の溶湯処理の影響を調べている。また、鋳鉄への環境遮蔽性コーティングの研究や鋳鉄組織の高度な制御を目指して鋳造時の冷却曲線と金属組織の関係を研究している。
消失模型鋳造法の溶湯充填挙動
消失模型鋳造法は、鋳物砂の再利用率がほぼ100%であるとともに鋳物の軽量化が可能であることから 環境にやさしい鋳造法として知られている。しかし、鋳物形状を発泡ポリスチレンなどの発泡模型によって付与することから 高温の溶湯注湯時にはその発泡模型が急速加熱分解され、大量の熱分解生成物が発生する。 このことが要因で鋳造欠陥の発生リスクがあるため、この鋳造法の普及率はあまり高くない。
本研究室では、消失模型鋳造法の普及率向上を目指して、鋳造欠陥発生の要因解明を目的として研究を行っている。
動画による説明はこちら⇒関大先生チャンネル(消失模型鋳造法)
鋳造用ハイエントロピー合金の開発
ハイエントロピー合金には従来の金属強化理論では説明できないほど高強度・高延性を示すものがあり、新しいカテゴリーの構造用金属材料として注目されている。
本研究室では鋳造時に生じる固相と液相の濃度差を利用して合金中の局部エントロピーの制御を図り、エントロピー効果を増大させた鋳造用ハイエントロピー合金の研究開発を行っている。
AI解析による自硬性鋳型の解析とリサイクル性向上
鋳造用の砂型は消失模型鋳造法などの特殊な場合を除いて、骨材である鋳物砂を粘結剤で結合して使用している。 鋳造後には鋳型を崩して製品を取り出すため、鋳型は破壊され砂再生処理を経てリサイクルされる。このとき骨材に付着・残存する粘結剤や鋳造時の高温爆熱によって劣化した粘結剤はリサイクル性を悪化させる要因となっている。
本研究室では、自硬性鋳型(フランや無機系)の内部構造をX線CTデータのAI解析によりミクロスケールにおける状態を解明し、リサイクル性向上に関する研究を行っている。