Nordic ISCARと「よい研究」

2013年6月12日(水)〜14日(金)、スウェーデンのクリスチャンスタード(Kristianstad)で開催された 6th Nordic ISCAR 2013 Conference (第6回国際文化・活動研究学会北欧会議)に発表とシンポジウムのディスカッサントを務めるため参加してきました。

6th Nordic ISCAR 2013 Conference プログラム(PDF)

6月11日(火)、ヘルシンキからデンマークのコペンハーゲンへの飛行機に乗るとき、まったく偶然にもユーリア・エンゲストローム先生ご夫妻・ご子息とご一緒になり、座席も横で大変驚きました。また、コペンハーゲンの空港で昼食をとり、その後、クリスチャンスタードまでの田園風景の中の鉄道の旅もご一緒で、いろいろお話を聞かせていただきながら楽しい移動の時間を過ごさせていただきとても幸いでした。

エンゲストローム先生からは、「よい研究とは何か」についてのお話も伺うことができました。先生は、三つのことに同時にアプローチするのが「よい研究」だとおっしゃっていて、その三つが次のようなものだと話されたのですが、とても興味深く思いました。

(1) 新たな事実の発見
(2) 理論の構築への貢献
(3) 方法論の構築への貢献

エンゲストローム先生は、こうした「よい研究」のお手本が、ヴィゴツキーだといわれました。しかし、ヴィゴツキーやエンゲスローム先生のように新たな理論を生み出す、すごい研究がふつうできるだろうかと当然疑問がわきます。

実は先生がこの話でいわれたのは、決して一足飛びに全体的な理論の構築を考えるというのではなく、小さな部分を丹念につかみ、とらえてゆくことで、時間はかかるけれども新たな理論の構築に一歩一歩貢献してゆく、そんな地道な研究のことでした。

先生のアドバイスは、やはり”Take no shortcuts”、近道はなし、ということです。私自身、研究を見つめ直すとてもよい旅のひとこまになりました。