ドイツの薬局に行き、下痢止めの薬を買おうとした。店員は私にStuhlはいかがですかと尋ねる。私はそばにあった椅子を指して、椅子がどうかしたのですかと逆に尋ねた。その若い女性薬剤師は困ったような顔をして、それ以上何も言わなかった。ともあれ薬は買った。後日、Stuhlには便通の意味があるということがわかった。正確にはStuhlgangと言うらしい。この経験を別のドイツ人に話すと、「Stuhlにもいろいろあるさ」と言われた。またあるとき、医者からStuhlprobeをすると言われ、一瞬何のことかわからなかった。検便のことだった。あれこれ辞典を調べると、古くからトイレの意味で使われていたようだ。オックスフォード英単語由来大辞典(柊風社)でstoolを引くと、「大便」を指すようになったのは、「腰掛式便器」からであると記してある。ヴェルサイユ宮殿でそうしたものが使われていたというのは聞いたことがある。みなさん、Stuhlにはご注意あれ。

執筆:工藤康弘